自動車保険の示談交渉とは?
流れと注意点、起こりやすいトラブルと対処法をFPが解説

テーブルを挟んで契約書や条件について話し合う2人のビジネスパーソンのイラスト

この記事は、一般的な自動車保険商品について説明しております。ソニー損保の自動車保険の詳細は「自動車保険トップページ」からご確認ください。

この記事で分かること

  • 示談交渉とは、過失割合や損害賠償額を当事者間で合意する話し合いのこと
  • 示談交渉は、治療や修理が終わって損害が確定した後に本格的に進む
  • 自動車保険に加入していれば保険会社が示談交渉の窓口になれる場合がある
  • 治療終了前に示談に応じると示談後の治療費等の請求ができなくなる可能性がある
  • 過失割合や慰謝料の金額など、示談交渉で起こりやすいトラブルには事前の備えが有効

日常の運転やレジャーで万が一事故が起きた際、損害賠償請求で避けて通れないのが「示談交渉」です。示談交渉は原則として保険会社が行いますが、自身に過失がない100%被害事故(もらい事故)の場合は、自分で交渉を行う必要があります。とはいえ、被害事故のケースでも保険会社に手続きの流れや特約の有無を相談しながら進めることは可能です。

この記事では、自動車保険の示談交渉の基本と交渉の流れや注意点、起こりやすいトラブルとその対処法を紹介します。万が一の事故に備え、示談交渉の基本を押さえておきましょう。

1.自動車保険の示談交渉とは?

示談とは、裁判によらず当事者間の話し合いで解決を図ることをいいます。交通事故では、過失割合(事故の責任の大きさを示す割合)や損害賠償額を決める必要がありますが、これらを当事者同士の協議で確定させ、双方が合意する手続きが示談交渉です。

示談が成立すると、法的拘束力が発生するため、原則としてその内容を後から変更することはできません。合意した内容は示談書(免責証書)として書面化され、これによって賠償に関する権利義務が確定します。

ソニー損保より補足説明

示談書とはトラブルの当事者間で合意した解決内容を記載した書面のことです。
示談書とは?法的効力と記載事項、注意点についてFPが解説

1-1.なぜ示談が必要になるの?

交通事故では、誰がどのくらい責任を負うのか(過失割合)と、いくら支払うのか(損害賠償額)の2つを決めなければ、賠償金の支払いや受取りができず、事故を法的に解決することができません。

ただし、過失割合や損害額の見方について双方の認識にズレが生じやすく、専門的な知識も必要になるため、その場の話し合いだけで簡単に合意に至るとは限りません。そこで、双方の主張を整理し、合意形成を図る手続きとして「示談交渉」が必要になります。

示談で合意に至らなかった場合は、裁判外紛争解決手続(ADR)や民事調停、民事訴訟(裁判)といった方法で解決を目指すことになります。

1-2.示談交渉は誰が行う?

示談交渉は、原則、加入している自動車保険の保険会社が窓口となって進めます。多くの任意保険には「示談交渉サービス」が付帯されています。事故の相手方への賠償が生じるケースでは、保険会社が契約者に代わって、相手方や相手側の保険会社との連絡、過失割合の調整、賠償金額の交渉などを行うのが一般的です。

一方、被害者に過失がない事故(いわゆる「もらい事故」)では、被害者側の保険会社は示談交渉を行うことができません。被害者に賠償責任が生じない以上、保険会社が交渉をすると弁護士法第72条に抵触するためです。この場合は、被害者自身で相手方(相手の保険会社)と交渉するか、弁護士に依頼する必要があります。

ただし、どのようなケースでも、示談の最終的な合意は当事者本人が行うものです。保険会社が交渉をする場合であっても、示談内容について最終判断をするのは契約者自身である点を覚えておきましょう。

1-3.過失ゼロの被害事故などで自分だけで示談交渉するのは難しい?

前述のとおり、「もらい事故」などでは自分自身で相手方と交渉を進めることになりますが、決して容易なことではありません。特に、レンタカー代や修理工場までの交通費が損害に含まれるのか、休業損害や慰謝料の算定が適正か、治療費がどの段階まで補償されるかといった判断は、専門知識がないと難しい場合があります(軽微な物損事故などは除く)。

加えて、法律や交渉の専門知識がないまま話し合いを進めると、内容を十分に理解できないまま合意してしまうリスクも生じます。このように、自分だけで交渉を進めることには大きな不安や負担がともない、スムーズに進まないことも多々あります。そのため、保険会社が直接交渉できない被害事故のケースであっても、まずは加入中の保険会社に相談しながら交渉を進めることが大切です。

また、弁護士費用特約を付帯していれば、弁護士に依頼する際の費用を保険で賄うこともできるため、その活用も積極的に検討するとよいでしょう。

2.保険会社が行う示談交渉の主な対応内容

任意保険の対人賠償保険・対物賠償保険に加入している場合、事故の相手方への賠償責任が生じるケースでは、保険会社が交渉窓口となり示談交渉をするのが一般的です。
保険会社が行う主な対応内容は、次のとおりです。

  • 事故の相手方への連絡と事故状況の確認
  • 過失割合の調査・交渉
  • 損害額の算定と賠償金額の交渉
  • 示談書(免責証書)の作成手続
  • 医療機関への治療費の支払手続(対人賠償の場合)

保険会社は過去の裁判例や専門知識をもとに交渉を行うため、当事者自身で対応するよりもスムーズな解決が期待できます。

なお、事故の相手方(加害者)が任意保険に加入していない場合は、相手方に示談交渉サービスがないため、相手方本人と直接やり取りを行うこととなります。

このようなケースでも、自分に過失がある事故であれば、自分の保険会社が窓口となって交渉を進めることが可能です。どのような状況であっても、まずは加入している保険会社に相談しながら進めるのが安心です。一人で抱え込まずに、アドバイスを仰ぐとよいでしょう。

3.自動車保険の示談交渉の流れ

交通事故の発生から示談成立までには、いくつかのステップがあります。ここでは、保険会社が示談交渉をする場合と、当事者自身で行う場合の一般的な流れを紹介します。

【保険会社が示談交渉をする場合】

1.事故発生・警察への届け出
事故が起きたら、まず負傷者の救護と安全確保を行い、必ず警察に届け出をします。

2.保険会社への連絡
加入している保険会社に事故の報告をします。担当者が決まり、初期対応が始まります。

3.治療・修理の実施
ケガの治療や車両の修理を行います。人身事故の場合は、完治または症状固定(これ以上の回復が見込めない状態)まで治療を続けることが重要です。

4.損害額の確定
治療費や修理費など、発生した損害の総額を算出します。後遺障害がある場合は、等級の認定結果を待ってから確定します。

5.示談案の提示・交渉
物損については保険会社間で過失割合や賠償金額について交渉が行われ、示談案が提示されます。人身損害については保険会社から被害者に直接賠償金額が提示されます。内容に疑問がある場合は、保険会社の担当者に相談しましょう。

6.示談成立・書面化
双方が合意すれば示談が成立し、示談書(免責証書)が作成されます。署名・捺印後、保険会社から賠償金が支払われます。

なお、被害者に過失がないもらい事故などでは、被害者側の保険会社は示談交渉できません。この場合、被害者自身が加害者側の保険会社(または加害者本人)と交渉を行います。基本的な流れは上記と同様ですが、交渉の窓口は自分自身となります。

被害事故であっても、加入中の保険会社に相談しながら進めるのが安心です。また、弁護士費用特約を付帯していれば、弁護士に交渉を依頼する費用を保険で賄えるため、専門家の力を借りて解決を目指すことも可能となります。

ソニー損保より補足説明

ソニー損保の示談書の雛形は以下リンクからダウンロードできます。
示談書のひな形(テンプレート)をダウンロード(PDF)

3-1.示談交渉で話し合う主な内容

示談交渉では、事故の責任の所在と損害賠償について、主に以下の内容を決定します。

●過失割合
事故の当事者それぞれにどの程度の責任があるかを決めるものです。過去の裁判例を参考に、事故の状況に応じて判断されます。過失割合によって最終的に受け取れる賠償金額が変わるため、重要な交渉項目です。

●損害賠償額
治療費、修理費、休業損害、慰謝料など、事故によって発生した損害総額の過失割合相当額です。

●後遺障害の有無と等級
治療を続けても症状の改善が見込めない場合、後遺障害の等級認定を行うことが可能です。認定された場合はその等級に応じた、慰謝料や将来の減収分(逸失利益)が賠償金として請求可能になります。

●支払方法・支払期限
合意した賠償金を、いつまでにどのような方法で支払うかを確認します。

物損事故と人身事故では交渉の内容が異なります。物損事故では主に修理費や車両の時価額が対象となりますが、人身事故では治療費や慰謝料、休業損害、逸失利益など交渉項目が多くなる点に留意が必要です。

3-2.示談交渉を進めるために必要なもの

示談交渉をスムーズに進めるためには、損害を証明する客観的な書類が必要です。一般的に必要となる代表的な書類は以下のとおりです。

●交通事故証明書
事故の発生日時や場所、当事者の情報が記載された公的な証明書で、最寄りの自動車安全運転センターで取得できます。通常は保険会社の担当者が取得するため、自分で取得する必要はありません。手数料は1通につき1,000円で、交通事故資料が警察署等から届いていれば、原則として即日交付されます。ゆうちょ銀行・郵便局での払込みの場合は、申請から10日ほどで届くのが一般的です。

●修理費の見積書・領収書
物損の損害額を証明する資料で、車両の修理を行った整備工場で発行されます。通常は保険会社と修理工場で修理内容や見積りについて打ち合わせを行います。

●診断書・診療報酬明細書
傷病名や治療内容・治療期間を証明するための書類で、通院先の医療機関で発行してもらえます。発行手数料は医療機関により異なりますが、数千円程度が目安となります。

●休業損害証明書
事故による休業期間と収入の減少額を勤務先に証明してもらう書類です。個人事業主の場合は確定申告書などが必要となります。

●後遺障害診断書
後遺障害が残った場合、等級の認定申請のために主治医に作成を依頼して取得する書類です。

保険会社が示談交渉をしている場合は、担当者から必要書類の案内があるのが一般的です。指示に従って書類を準備・提出を進めましょう。

4.示談交渉で注意したいポイント

示談交渉を進めるうえで、知らずに不利な状況を招いてしまわないよう、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。

4-1.当事者同士で感情的なやり取りをしない

交通事故の当事者同士で直接交渉を行うと、認識の違いから感情的な対立が生じやすくなります。不用意な発言が、法的に不利な責任を認めたと受取られてしまうリスクもあります。原則として、窓口は保険会社の担当者に任せ、冷静に手続きを進めることがスムーズな解決への近道です。

4-2.治療終了前に示談しない

人身事故の場合、治療が終了する前に示談を成立させないことが重要です。示談が成立すると、法的拘束力が発生し、原則として後から内容を変更できなくなります。

そのため、仮に示談後に症状が悪化した場合でも、追加の治療費や慰謝料を相手方に請求するのは困難になるのが一般的です。完治するか、医師から症状固定の診断を受けてから、示談交渉を始めましょう。

4-3.口約束で終わらせない

当事者同士で話し合いがまとまった場合でも、口頭の約束だけで終わらせるのは避けましょう。支払金額や支払期限が曖昧なままだと、後日「言った・言わない」のトラブルに発展する恐れがあります。

示談が成立した際は、示談書(免責証書)を作成し、双方が署名・捺印して書面として残しておくのが基本です。合意内容を明確に記録しておくことが、後日の紛争防止につながります。

4-4.内容を理解してから署名する

示談書に署名・捺印すると、「示談書に記載された内容で最終合意した」とみなされ、原則としてそれ以上の損害賠償の請求権を放棄したことになります。内容を十分に理解しないまま署名してしまうと、後から不足分を追加請求したり、内容を修正したりすることは困難です。
署名する前に、以下のポイントを確認しておきましょう。

  • 支払金額が合意した内容と一致しているか
  • 支払期限が明記されているか
  • 対象となる損害の範囲が正しく記載されているか
  • 清算条項(追加請求をしない旨)の記載内容に問題がないか

少しでも不明な点がある場合は、署名する前に必ず保険会社の担当者や弁護士に確認するようにしましょう。

5.示談交渉で起こりやすいトラブルと対処法

示談交渉では、さまざまなトラブルが生じることがあります。ここでは、代表的なケースとその対処法を紹介します。

5-1.過失割合で折り合わない

交通事故の示談交渉において、特にトラブルになりやすいのが過失割合です。過失割合とは、事故の当事者それぞれにどの程度の責任があるかを示した割合のことで、過去の裁判例などを基準にして決定されます。この割合は賠償金額に直結するため、当事者間で意見が分かれやすい項目といえます。

結論を急いで示談を成立させようとすると、後から変更できない合意をしてしまう可能性があるため、事故直後に必ず警察に届け出を行い、実況見分調書などの客観的な記録を残すことが重要です。ドライブレコーダーの映像や目撃者の証言も有力な資料になります。

5-2.損害賠償の金額で意見が分かれる

交通事故では、損害賠償の金額について当事者の考え方が異なり、トラブルに発展することがあります。たとえば、修理費の妥当性や休業損害の計算方法などで見解が一致しないケースが考えられます。

これを防ぐには、領収書や見積書、通院記録など、損害額を裏付ける証拠をしっかり残しておくことが有効です。ただし、証拠があっても金額の妥当性で意見が分かれることもあるため、その場合は、保険会社や専門家に相談しながら話を進めましょう。合意する前に内容を十分確認し、納得したうえで示談に臨むことが重要です。

5-3.慰謝料の金額に納得できない

人身事故では、提示された慰謝料の金額に納得できないケースが生じることがあります。慰謝料は通院期間や症状の程度によって算定されるため、同じ事故であっても被害の状況によって金額に差が出ることがあります。

そのため、通院日数や治療内容の記録を日頃から残しておくことが大切です。計算の基準や金額の算出根拠について不明な点があれば、保険会社の担当者に説明を求めましょう。必要に応じて弁護士に相談し、提示された金額が適正かどうかを確認することも有効です。

5-4.相手と連絡が取れなくなる

示談交渉では、相手が任意保険に加入しておらず、直接本人とやり取りする場合、相手方と連絡が取れなくなるケースもあります。連絡の遅れや無視が続くと、交渉が進まず解決までの期間が長引く原因になります。相手が任意保険に加入していれば、示談交渉は基本的に保険会社の担当者が窓口となるため、この連絡が取れなくなるリスクは低くなります。

一方、もらい事故などで自身の保険会社の示談交渉サービスが使えず、さらに相手が任意保険に加入していない場合、事故当日に相手方の氏名・住所・電話番号・車両のナンバーなど、連絡先や身元を確認しておくことが特に重要となります。その際、複数の連絡手段を把握しておくと、万が一の際に役立ちます。相手との連絡が途絶えた場合は、早めに保険会社や弁護士に相談し、対応策を検討しましょう。

6.自動車保険の示談交渉を安心して進めるために

示談交渉は、過失割合の決定や損害賠償額の計算など専門的な判断が求められる場面が多く、当事者にとって負担が大きい手続きです。基本的には加入している保険会社の「示談交渉サービス」に任せるのが、スムーズな解決への近道となるでしょう。

万が一の事故に備えて、自分が加入している自動車保険に示談交渉サービスがついているか、もらい事故の際にも弁護士に相談できるよう弁護士費用特約が付帯されているかを、今一度確認しておくことが大切です。

日頃から保険の内容を見直し、万が一のときにも保険を活用できるように備えておくことが、安心・安全なカーライフにつながります。