居眠り運転の危険性と眠気の対処法

2023年5月時点の内容です。

居眠り運転の危険性

空調のきいた快適な車内は、季節を問わず眠気を誘うようです。しかし、時速40kmで走行するクルマは1秒間に約11m進みます。うっかり5秒間ウトウトしてしまっただけで、一気に50m以上も進んでしまうのです。

ドライバーの居眠り=居眠り運転は、危険回避をせずに衝突するため被害が大きく、死亡事故や重傷事故などの重大事故につながる割合も高い大変危険な行為です。高速道路における居眠り運転の死亡重傷率は、他要因の4倍以上とも言われています。

居眠り運転による事故が起きやすい場所や時間帯

同じような景色の続く高速道路や国道での走行は、安心感や単調感から居眠り運転を誘発しやすいといわれています。居眠り事故の発生場所は単路(道路のうち交差点や踏切などを除いた部分)のカーブ地点に多く、走行中に路外に逸脱して壁などに激突したり、対向車と正面衝突したりするケースがほとんどという特徴があります。

時間帯別では、深夜の午前0時〜早朝、そして午後2時〜午後4時に多く発生しています。これは人間の体内時計による脳の覚醒水準(意識がハッキリしている度合)も影響していると考えられています。年齢や性別によっても差はありますが、一般的に覚醒水準は午前6時頃が一番低く、午前10時頃に一番高くなり、午後1時〜午後4時頃にかけて少し低下します。そこから午後7時頃まで再び上昇したあと、翌日の午前6時頃まで徐々に低下していきます。

疲労蓄積のサインを見逃さない

居眠りは脳の覚醒水準の低下が原因で、そのほとんどが疲労の蓄積や目から入る刺激の低下により発生します。具体的には、身体疲労や睡眠不足、長距離運転による疲労、満腹感や血糖値の低下、連続して似た景色を見続けることによる刺激の低下なども原因となります。

脳の覚醒水準が低下すると、集中力や判断力も大きく低下していきます。そのため無意識のうちに運転操作が雑になり、ハンドルやブレーキ操作に正確さを欠いたり、信号や標識を見落としたりするようになります。こうした状態を見逃してしまうと居眠り運転に陥って、重大な事故を引起こす危険性が高まります。

運転中に次のような状態を感じたら、それは疲労蓄積のサインです。

疲労蓄積のサイン
  • 目がショボショボしたり、視界がチラついたりする
  • 頭が重くなる、痛くなる
  • 前方だけを注視して、隣の車線や後方の車両に気がつかない
  • 赤信号に気がつかずに交差点に進入しそうになる
  • 無意識に前方の車両に接近しすぎている
  • あくびやまばたきの回数が増える

このような状態で運転を続けることは非常に危険です。しかし、同乗者がいない場合は特に、なかなか自覚できないものです。日ごろから疲労蓄積のサインを意識して運転するように心がけましょう。

眠気の対策・対処法

まず大前提として、極度に疲れているときや睡眠不足のときにはクルマの運転を控えることが重要です。クルマを運転する機会の多い方は日頃から体調管理を心がけ、十分な睡眠時間を確保して常にベストコンディションを維持するよう努めましょう。

<注意> 眠気を引起こす成分の入った薬の、運転前の服用は、絶対にやめましょう。

もし運転中に眠気を感じてきたら、以下の方法を試してみてください。

疲れを感じる前に休憩をとる

長時間のドライブでは、最低でも2時間に1回は休憩をとるようにしましょう。クルマを降りて新鮮な空気を吸込み、軽く身体を動かしてリフレッシュするようにします。

ガムなどを噛む、糖分の多く含まれた飲み物を飲む

ガムやコンブなどを噛むことは、脳の血管を拡張させて血行を良くするので、脳の覚醒水準低下を防止する効果があるといわれています。また、脳は糖分が不足して血糖値が下がると疲労を感じてしまいます。糖分の多く含まれた飲み物を飲むようにしましょう。その際は、糖分の吸収をサポートするビタミンB1を多く含む食品などを一緒にとるとさらに効果的です。ビタミンB1は、豚肉やキノコ類、ゴマ、ナッツなどに多く含まれています。

食後すぐの運転は控える

食事をとると消化活動が活発になって、体内の血液が胃腸に集中してしまいます。そのため食後はすぐに運転せずに、場合によっては仮眠をとってから出発するようにしましょう。

カフェインを摂取する

眠気防止に有効なものとして広く知られているのがカフェインです。現在はさまざまな眠気防止ドリンクが市販されていますが、糖分やビタミンB1なども含まれたものを選ぶと効果的でしょう。ただし、滋養強壮向けの栄養ドリンクなどにはアルコールが含まれているものもあるので、そうしたものは避けるようにしてください。なお、カフェインは摂取してすぐにきくわけではありません。状況によっては、刺激で眠気を覚ますガムやダブレットなども併用して、しっかりと眠気を覚ましてから運転を再開しましょう。

そのほかにも「音楽に合わせて大きな声で歌う」や「覚醒効果のあるペパーミントなどのアロマを吸う(眠気を誘うラベンダーは逆効果)」などさまざまな対策があります。

眠気の対策

仮眠をとるのが一番安全で効果的

これまで紹介した方法は脳の覚醒水準を上げることには効果がありますが、「眠い」という睡眠欲求そのものを除去する方法ではありません。そのため、睡眠欲求を満たすためには「安全な場所にクルマを止めて仮眠する」ことがもっとも安全で確実な方法といえます。

なお、仮眠をとる際、仮眠時間は20分以内にとどめるようにしましょう。仮眠時間が30分を越えてしまうと深い睡眠に入ってしまい、起床しにくく、目覚めた直後はかえって眠気や疲労が増大してしまいます。

十分な睡眠をとっているのに眠くなってしまう場合

睡眠時間は十分なのに、頻繁に日中の眠気に悩まされる方は「睡眠時無呼吸症候群」などの睡眠障害を疑ってみる必要があります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome、以下SAS)とは睡眠障害の一種で、睡眠中の呼吸リズムが乱れて断続的に停止することにより、睡眠中に酸素不足に陥るものです。酸素不足のため熟睡することができず、日中でも強烈な眠気や集中力不足といった症状を引起こしてしまいます。現在、日本人の成人の約3%がSASとされていますが、自覚している人が少ないので、実際の患者数はもっと多いと考えられています。

アメリカでの調査結果によれば、SAS患者の交通事故率は非SAS患者と比べて約7倍というデータも出ており、治療もせずに放っておくことは非常に危険です。

2014年(平成26年)6月の道路交通法の改定では、運転免許証の取得・更新時におけるSASも含む睡眠障害などへの対策が強化されました。一定の病気等に該当するかどうか判断するための質問票に回答し、SASなどの疑いのあるドライバーは暫定的に免許の効力が停止される可能性もあります。

SASの眠気については、治療によって運転に支障のないレベルまで改善することが可能とされています。SASの症状がある方や少しでも疑いがある方は、一度専門医の診察を受けましょう。

「無理をして事故を起こしてから後悔しても遅い」ということを認識し、居眠り運転を起こさないように注意しましょう。