高速道路を逆走してきたクルマとの事故

2024年4月時点の内容です。

高速道路を逆走してきたクルマとの事故

重大事故につながる可能性が高いと言われている、高速道路を逆走するクルマとの交通事故。
2014年9月のNEXCO東日本やNEXCO西日本など高速道路株式会社6社の発表 によると、2011〜2013年の3年間で発生した541件の逆走事案(交通事故に至っていない案件も含む)の分析結果から、高速道路の逆走には以下のような特徴があることが分かったそうです。

  1. 大半がインターチェンジ(IC)・ジャンクション(JCT)にて発生している
  2. 逆走してしまったドライバーの約7割が65歳以上
  3. 約4割が認知症の疑いや飲酒などのドライバーによるもの
  4. 約6割が昼間に発生している

高速道路を逆走するクルマとの交通事故に巻き込まれてしまったケースを例に、過失割合や支払われる保険金について解説します。

【ご注意!】 ここで紹介する事例等は、あくまでも当社の商品内容に基づくもので、かつ、一般的なものです。ご契約内容や損害を受けた状況などによって実際の対応は異なることがあります。

【事例】高速道路を走行中、前から逆走してきたクルマと衝突してしまいました。

高速道路を走行中、前から逆走してきたクルマと衝突

高速道路を走行中、突然前から現れたクルマに驚き、ハンドルを切ろうとしましたが間に合わず衝突してしまいました。愛車は全損となり、自分自身も大ケガを負ってしまいました。この場合、過失割合はどうなるのでしょうか?逆走してきた加害者が契約している自動車保険で、クルマの修理費やケガの治療費を支払ってもらえるでしょうか?

【過失割合】

自車:逆走車(加害車両)=0:100

【解説】

高速道路上では逆走は禁止されており、基本的には逆走してきたクルマに100%の過失があると考えてよいでしょう。
しかし、例外のケースも考えられます。例えば、見通しのよい高速道路を走行中、衝突するかなり前から逆走車の存在に気づいており、車線を変更するなどの事故回避措置を取ることができたにもかかわらず、こうした措置を怠り漫然と走行していた場合は、自身側に不注意があったとして過失を問われる可能性があります。
相手の逆走によって起こった事故なのに自身に過失が生じるのは納得感が無いかもしれませんが、クルマを運転する以上、前方に注意して運転する責任を負っているという考えから、自身にも一定の過失があったとされる場合もあります。

支払われる保険金の額は?

ケガの治療や逸失利益、慰謝料など

加害者が契約する自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)から、算定された損害額が保険金として支払われます。なお、自賠責保険の支払限度額は傷害の場合は1名につき120万円まで、死亡の場合は1名につき3,000万円まで(後遺障がいの場合は4,000万円まで)となっており、損害額が自賠責保険の限度額を超えた分については、加害者が契約する任意保険の「対人賠償保険」から保険金が支払われます。なお、加害者側の任意保険会社が、自賠責保険で支払われる金額を含めて対応するのが一般的です。

クルマの修理費など

加害者が契約する任意保険の「対物賠償保険」から、クルマの修理費など算定された損害額が保険金として支払われます。ただし、クルマの修理費が時価額 を超える場合は、時価額が損害額となります。

※自身にも過失が生じる事故の場合には、支払われる保険金の額は、損害額から自身の過失分を引いた額となる場合があります。

高速道路の逆走で事故を起こした場合には厳しい罰則が

パトカー

2014年5月20日、交通事故で人を死傷させた場合の罰則を強化した「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されました。これにより、無免許運転や飲酒運転など、悪質な運転で事故を起こした場合の刑罰が重くなったほか、危険運転致死傷罪が適用される走行・運転行為に、『通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為(第2条第6号)』が追加されました。
ここでの「通行禁止道路の進行」とは、歩行者天国などの通行禁止場所での走行や、一方通行道路・高速道路の逆走などのことで、高速道路の逆走で事故を起こして相手にケガもしくは死亡させてしまった場合は、危険運転致死傷罪(※)が適用されることになります。

※危険運転致死傷罪が適用されると、傷害の場合は15年以下の懲役、死亡の場合は1年以上の有期懲役(最高で20年)が科せられます。


現時点でも依然として逆走が発生している状況にあるようですが、高速道路を管理・運営している各社は逆走の発生を防止するため、逆走が発生する地点の調査や原因分析をもとに、さまざまな対策を講じているようです。
高速道路の逆走が原因の事故のニュースを耳にすることが絶えませんが、悲しい事故が少しでも減ることを祈るばかりです。