歩道の知識

2023年5月時点の内容です。

歩道のマーク

普段、私たちが何気なく歩いている「歩道」にも起源や歴史があり、法令上の規定もきちんと設けられています。ドライバーにとっても身近な存在の歩道にまつわる歴史やトリビア、現在の問題点などを紹介します。

歩道の定義と現状

歩道とは一般に人が歩く道の総称として用いられますが、道路交通法第二条では「歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によって区画された道路の部分をいう」、道路構造令第二条では「専ら歩行者の通行の用に供するために、縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画して設けられる道路の部分をいう」とそれぞれ定義されており、法令上はあくまで車道などに併設して区画、整備された道のことを指しています。さらに、道路構造令第十一条には「歩道の幅員は、歩行者の交通量が多い道路にあっては3.5メートル以上、その他の道路にあっては2メートル以上とするものとする」とあり、道幅も明確に定められています。

歩道を設置できないような狭い道では、道路脇に白線によって路側帯が設けられることが多いです。

歩道の始まり

馬車の利用が進んでいたヨーロッパで、馬車と歩行者が通行する道を区別したのが歩道の始まりといわれています。2000年以上も前の文化や文明が垣間見られるローマのポンペイ遺跡では、馬車道の両側に一段高くなった歩道が設けられていて、さらに、歩行者が馬車道を横切るための、横断歩道の起源とも呼べる踏石が残されていることでも知られています。

日本では、江戸幕末の慶応年間に横浜の外国人居留地で馬車道と人道を区別したことが歩道の最初とされています。その後、1872(明治5)年の大火のあとにロンドンの街並みをまねて作られた銀座煉瓦街で、馬車や人力車が通行するメイン道路の両脇に、きちんと区画された歩道が設けられました。そして、大正期に入りクルマが普及し始めると、1919(大正8)年には日本の道路政策の基本となる道路法が公布されました。また、同年には一定規模以上の道路は車道と歩道を分離することと規定した街路構造令も交付され、歩道の設置が一気に加速しました。

翌1920(大正9)年には、日本で初めてとなる横断歩道が東京の錦糸町に設けられました。市電を横切るために設置されたため、当時は電車路線横断線と呼ばれ石灰粉で書かれていました。ちなみに、横断歩道標示が法律化されたのは1960(昭和35)年のことで、現在の縦線のないゼブラ模様のデザインが主流になったのは1992(平成4)年以降からです。

◆横断歩道の変遷

横断歩道の変遷

歩道と自転車

ここであらためて考えておきたいのが、自転車は歩道と車道のどちらを走行すべきなのかということです。意外に知らない方が多いようですが、自転車は道路交通法上では軽車両に分類されているため、原則として車道を走行しなければなりません。歩道はあくまで歩行者の通行が優先されています。ただし、標識で自転車通行可とされている歩道は走行することができ、この場合、自転車は車道寄りを原則徐行しなければなりません。

また、2008(平成20)年8月の道路交通法および同施行令改正によって、歩道を通行できる自転車に以下の場合が追加されました。

  • 児童(6歳以上13歳未満)や幼児(6歳未満)が運転する場合
  • 70歳以上の者が運転する場合
  • 安全に車道を通行することに支障を生じる程度の身体の障害を持つ者が運転する場合
  • 車道等の状況に照らして自転車の通行の安全を確保するため、歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合

一方、歩行者に対しても、歩道内に自転車の通行すべき部分が指定されている場合は、この部分をできるだけ避けて通行するように努めること、という新たな規定が設けられていますので、普段あまり自転車を利用しないという方もきちんと覚えておきましょう。

白線やカラー塗装で、自転車と歩行者の通行指定分が示されている歩道もあります。

歩道がない狭い道ではクルマのドライバーは、いつも以上に注意深く運転する必要があります。必ず速度を落として、歩行者の安全を確認しながら走行してください。なお、原則としてクルマは路側帯の領域内に進入して通行することができないということを覚えておきましょう。