前向き駐車の意味と注意点
2023年5月時点の内容です。
コンビニエンスストアやレストランなどの駐車場で、「前向き駐車でお願いします」という看板を見かけることがあります。この「前向き駐車」の意味や駐車時の注意点について紹介します。
このコーナーでは、ドライブやカーライフに関する一般的な情報をご紹介しております。
前向き駐車の前ってどっち?
駐車スペースの壁などに「前向き駐車」の看板があった場合、クルマをどちら向きに止めればよいのか分からない人が意外に多いようです。確かに「前向き」の言葉だけでは、クルマの前を奥側にするのか手前側にするのか迷いやすいですよね。前向き駐車は英語では「head in parking」となり、クルマの前方から駐車スペースに入れるのが正解です。
前向き駐車の看板が設置されている場所は駐車スペースに隣接した家屋や植栽などがある場合がほとんどで、駐車時の排気ガスや排気音が迷惑にならないようにという配慮から設置されています。正式な道路標識ではなく所有者が設置した看板ですので、無視したからといって交通違反にはなりませんが、ドライバーのマナーのひとつとして守るようにしましょう。
前向き駐車時の注意点
自動車の運転免許を取得する際に、自動車教習所でバックによる「車庫入れ」を練習したと思います。初心者ドライバーにとっては鬼門ともいえるテクニックで、慣れるまではなかなかうまく駐車できない人も多い運転操作です。それに比べて前向き駐車は前から入るだけだから簡単と考えがちですが、実際にやってみるとなかなかうまくいかないことに気がつくかと思います。
こちらも自動車教習所で習う重要な知識ですが、前向き駐車をする際には自動車の特性である「内輪差」をしっかりと理解していないと思わぬ接触事故につながります。内輪差とはハンドルを回した状態でクルマを前進させた際に、内側の前輪と内側の後輪が描く円弧の半径に生じる差のことです。
前進しながら曲がる場合は、この内輪差の影響で前輪よりも後輪が内側を通過することになりますので、狭い車路から直角に位置するスペースに前向き駐車しようとすると、隣に駐車しているクルマに自車の後方側面が接触しやすくなります。こうした場所では無理に1回で入れようとせずに、何度か切り返しを行ってクルマの角度を修正しながら駐車するようにしましょう。
前向き駐車から出る際の注意点
前向き駐車をした場合は当然駐車スペースからバックで出ることになります。走行中の重大な交通事故に比べて目立ちませんが、実は駐車場などの構内や道路への出入りの際の「バック事故」は、物損事故の大きな割合を占めるといわれています。また、バックするクルマと歩行者との人身事故も非常に多く発生しています。
クルマは後方の死角が大きく、バックの運転ではより慎重な安全確認と運転操作が必要です。早く出たいという気の焦りなどから安全確認を怠ると、思わぬ事故につながることになります。バックミラーやバックモニターだけに頼らず、目視による入念な安全確認を行ってください。同乗者がいる場合は誘導してもらうなど協力してもらいましょう。
また、バックで駐車スペースから出る際には、入ったときとは反対に「外輪差」によって前方が膨らんで隣のクルマに接触しやすくなります。はじめから大きくハンドルを切らずに、できるだけクルマを駐車スペース外へ出してから方向を変えるように心掛けましょう。
海外では前向き駐車が当たり前?
日本では限られたスペースに効率よく多くの車両が駐車できるようにするために、バックによる駐車が前提となっている構造の駐車場がほとんどです。日本人ドライバーなら当たり前のように行っているバックでの駐車ですが、海外の人たちから見ると巨大な駐車場にすべてのクルマが整然とバックで駐車されている光景というのは、ちょっと異様に感じてしまうようです。
そもそも海外の市街地では日本のように駐車場がところどころにあることが少なく、路上駐車が一般的です。これはヨーロッパなど古い建造物が多い街並みなどでは広大な駐車場を建造しにくいといった事情もありますが、駐車といえば路上や広めの路側帯に縦列駐車することが常識のようです。アメリカの都市部でも立体駐車場や地下駐車場は非常に少なく、パーキングメーターを利用して路上駐車するか、ホテルの駐車場などに預ける場合が多いようです。
また、郊外の大型ショッピングセンターなどには広大な駐車場がありますが、その多くは車路や駐車スペースが広めに設けられ、前向き駐車が常識となっています。前向き駐車が行いやすいように駐車レーンが斜めになっているところも多いようです。これは週末に大量に買い物をするといった生活習慣から、リアゲートやトランクを開けて荷物を納めやすい前向き駐車が便利といった理由からです。反対に、日本車に狭い駐車スペースでも乗り降りや荷物を入れやすい「スライドドア」が普及していることも、そのような駐車場事情によるものなのです。
簡単なようで意外に難しい前向き駐車。タクシーやトラックなどプロドライバーのなかには、事故防止のためにできるだけ前向き駐車の場所は避ける人も多いようです。ちょっと大変そうだなと感じたときは、無理をせずにほかの駐車スペースを探したほうが得策かもしれません。
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