自動車保険の中断証明書とは?
発行方法や必要書類、保険再開時の注意点をFPが解説

中断証明書による等級の保護を象徴する盾と、チェックリストの前で保険手続きの完了を喜ぶ男女のイラスト

この記事は、一般的な自動車保険商品について説明しております。ソニー損保の自動車保険の詳細はこちらからご確認ください。

この記事で分かること

  • 中断証明書とは、車を手放す際や海外渡航などでしばらく車に乗らない場合に、等級を最長10年保存できる書類のこと
  • 中断証明書を発行すると契約中断前の等級を保存でき、新規で契約し直すよりも再契約時の保険料が安くなりやすい
  • 親の中断証明書があれば、同居している子どもも中断前の等級から契約できる
  • 中断証明書を発行するには、解約または満期で終了した自動車保険の保険会社に発行を依頼する
  • 中断証明書を利用して自動車保険を再開するには条件を満たす必要がある

引越しや転勤などで車を廃車や譲渡などで手放したり、海外渡航でしばらく車に乗らない場合、自動車保険を解約してしまうと再契約時に等級がリセットされ、一般的に保険料が高くなってしまいます。こうしたことを防ぎ、再開後も保険料の負担を抑えられることがあるのが、中断証明書です。

この記事では、自動車保険の中断証明書の概要や発行のメリット、手続方法、再開時の注意点を分かりやすく解説します。

1.自動車保険の中断証明書とは

中断証明書とは、廃車・譲渡などで一時的に車を手放したり、海外渡航などでしばらく車に乗る予定がない方が、自動車保険の契約を解約する場合や継続しない場合に発行できる書類のことです。

中断証明書を発行すると、保険契約を中断する期間があっても、再び自動車保険を契約する際に中断する前の等級を引継ぐことが可能となり、証明書がない場合と比べて保険料が安くなることがあります。

中断証明書があれば、一時的に車を手放すことになっても、中断前の等級を一定期間保存できるため、積上げてきた等級を無駄にせずに済みます。

例えば、車の売却に伴って自動車保険を解約する際に中断証明書を発行しておくことで、再び車を購入する際に中断前の等級を引継いで保険を再開できます。結果として、新規契約で6等級から始めるよりも保険料の負担軽減に期待できます。

なお、中断証明書には有効期限があり、契約を中断した日から最長10年間有効です(※保険会社によって異なる場合があります)。有効期限の詳細については、後述する「自動車保険を再開する際の注意点」で詳しく解説します。

2.中断証明書を発行する仕組みとメリット

中断証明書を発行するメリットは、再契約する際の保険料を安くできることです。なぜ安くなるのか、その仕組みを解説します。

2-1.再契約時の自動車保険料が安くなる

自動車保険の契約を廃車や海外渡航などの理由で一時的に解約した場合、中断証明書を発行していないと、次に加入する際は原則として6等級からのスタートとなります。一方、中断証明書を発行していれば契約を中断する前の等級を保存でき、再契約時に引継ぐことが可能です。

自動車保険の等級は6等級からスタートし、1年間事故がなければ翌年1等級上がり7等級になり、最高で20等級まで上がります。等級が上がると保険料が下がるため、等級を引継げば6等級から始めるよりも安い保険料でスタートできるのです。

2-2等級を最長10年間保存できる

中断証明書には有効期間があり、契約を中断した日から最長10年間有効です(※保険会社によって異なる場合があります)。有効期限内で、かつ再開時の条件を満たしていれば、いつでも等級を再開できます。

例えば、大学卒業や就職で車を手放し、数年後に再び車を所有するとします。この場合でも、中断証明書があれば、等級を維持して将来に備えられるのです。

また、子どもが車の免許を取得して車に乗るようになる場合、通常は新規契約として6等級からスタートし、保険料が高くなりがちです。しかし、仮に親が中断証明書を取得していた場合、要件を満たすことで親族である子どもが利用し、中断前の高い等級から契約を始められます。

このように、最長10年の余裕があるため、ライフプランに合わせて対応できる点がメリットです。

3.中断証明書の発行条件

自動車保険の中断証明書を発行するには、等級や手続きの期限、中断の事由など、いくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、主な条件について具体的に見ていきましょう。

3-1.中断する契約の等級が7等級以上であること

中断証明書を発行できるのは、原則として中断する契約の等級が7等級以上の場合です。

自動車保険の新規契約は通常6等級からスタートするため、初めて自動車保険に加入した直後など、等級が6等級のまま中断する場合には中断証明書を発行できないことが一般的です。ただし、無事故で満期を迎える契約であれば、6等級でも発行できる場合があります。

なお、現在7等級以上でも、事故で保険を使って等級が7未満に下がると発行できないので注意が必要です。例えば、7等級で3等級ダウン事故があった場合は4等級となり発行対象外となります。

3-2.所定の期間内に手続きをすること

中断証明書を発行するには、契約の中断日(解約日または満期日)から保険会社が定めた期限内に手続きをする必要があります。この期限は、保険会社によって大きく異なるため、発行を希望する際は、契約している、または契約していた保険会社に期限を確認しましょう。

手続きが遅れてしまうと等級がリセットされ、次回の加入時は6等級からのスタートとなってしまうため、できれば解約や満期終了と同時に忘れず手続きを進めることが重要です。

3-3.中断する事由に該当していること

中断証明書は、以下の表のような特定の事由に該当する場合に発行できます。

中断証明書の発行事由 条件
廃車・譲渡・売却の場合 保険契約の解約日または満期日までに、対象車両について廃車手続き、第三者への譲渡・売却、またはリース会社への返還手続きが完了していること
車検切れの場合 対象車両の車検の有効期限が満了し、継続検査を受けずに、保険契約の解約日または満期日の翌日時点で自動車検査証の効力を失っていること
盗難の場合 保険契約の解約日または満期日までに対象車両が盗難被害に遭い、かつ発見されていない状況であること
海外赴任・海外渡航の場合 記名被保険者(主に運転される方)の長期海外渡航により一時的に契約を中断する場合で、解約日または満期日が、出国日の6ヵ月前の日以降であること
ほかの保険契約への車両入替の場合 保険契約の解約日または満期日までに、対象車両がほかの保険契約中の車両に入替えられていること

車検の有効期限を迎える前の車を手元に置いたまま保険契約のみを解約する場合や、上記のいずれにも該当しない場合の解約では中断証明書を発行できません。

ただし、上記以外にも、保険会社によって独自の発行条件が定められている場合があるため、詳しくは保険会社に確認してください。

ソニー損保より補足説明

海外赴任・海外渡航の場合、当社では「契約者の海外渡航」が発行事由となります。

4.中断証明書の発行方法と流れ

保険会社によって異なりますが、中断証明書は手続完了後、1週間から3週間程度で郵送されることが一般的です。発行を希望する際は、以下の流れを参考に必要書類を準備して手続きを進めましょう。

4-1.中断証明書の発行に必要なもの

中断証明書を発行する際は、保険会社所定の中断証明書発行依頼書の提出が必要です。保険会社によっては、保険証券や契約内容が確認できる書類、本人確認書類が必要な場合もあります。

ソニー損保より補足説明

当社ではウェブサイトもしくは電話にて中断証明書の発行を受付けています。
さらに事由ごとの必要書類も保険会社によって異なるため、詳細は確認が必要です。

中断証明書発行に必要な書類の例は、以下のとおりです。

中断証明書の発行事由 必要書類の例
廃車・譲渡・売却の場合
  • 車両の登録抹消を証明する公的書類(登録事項等証明書、登録識別情報等通知書等)
  • 軽自動車の場合:検査記録事項等証明書
  • 譲渡・売却時:売買を証明する契約書のコピー
車検切れの場合
  • 有効期限切れの自動車検査証・車検の失効を証明する公的書類(登録事項等証明書等)
  • 軽自動車の場合:検査記録事項等証明書
盗難の場合 盗難届出証明書などの公的書類
ほかの契約への車両入替の場合 車両入替の完了を示す保険会社発行書類

4-2.中断証明書発行までの流れ

中断証明書を発行するには、現在加入中の自動車保険契約の解約時または満期終了時に、保険会社へ依頼する必要があります。これらの手続きは、契約終了後、保険会社が定める期限内に速やかに行うことが重要です。

以下では、中断証明書を発行するための具体的なステップを順に解説します。

4-2-1.自動車保険を解約または満期で終了

契約を中断するには、現在の保険契約を終了する必要があります。そのため、契約している自動車保険を解約するか、満期で終了する必要があります。

廃車・譲渡・売却の場合、保険の解約日または満期日以前にそれらの手続きが完了していることが必要ですが、廃車日などが決まっている場合は、その日を解約日として解約と同時に中断手続きをすることが可能です。廃車・譲渡・売却の手続きが後になると中断証明書を発行できませんので、必ず車に関する手続きを同時にするように気を付けましょう。

満期の場合、継続手続きをしなければ満期日をもって契約が終了するのが一般的です。しかし、自動継続の取扱いがある保険会社の場合は、継続手続きしなくても契約が終了しないため、満期日までに継続しない旨を保険会社に連絡する必要があります。途中解約の場合は、契約期間中に解約手続きを行うことで契約が終了します。保険料が年払いの契約で途中解約する場合は、未経過部分の保険料が返金されることもあるため、事前に確認しておきましょう。

保険契約が終了したら、すぐに中断証明書の発行手続きを進めることが大切です。発行期限があるため、解約・満期終了と同時に手続きを進めましょう。

4-2-2.中断証明書の発行を依頼

自動車保険の契約が終了した後、速やかに現在契約している保険会社に中断証明書の発行を依頼します。

依頼方法は保険会社によって異なりますが、電話や書面での手続きが一般的です。解約手続きと同時に中断証明書の発行を依頼できる保険会社もあり、この場合はインターネットでの一括手続きが可能な場合もあります。

保険会社から中断証明書発行依頼書が送付されたら、依頼書に必要事項を記入しましょう。車両処分などを証明する書類と一緒に保険会社に返送することで、中断証明書が発行されます。

中断証明書は、保険契約の解約や満期終了と同時に発行手続きをするのが一般的ですが、後からでも発行することは可能です。なお、中断証明書の発行には期限があるため、契約している保険会社に確認のうえ、発行を忘れないよう注意しましょう。

ソニー損保より補足説明

当社では、中断証明書の発行はウェブサイトまたは電話で受付けており、解約手続きと同時に中断証明書の発行依頼も可能です。

5.中断証明書を利用して自動車保険を再開するには

中断証明書を使って自動車保険を再開するには、いくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、再開の際の条件や具体的な手続きの流れについて、詳しく解説します。

5-1.再開の条件

中断証明書を使って自動車保険を再開し、等級を引継ぐ場合、以下の条件を満たす必要があります。

以下の表は一般的な条件を記載しています。各条件の詳細は保険会社ごとに異なる場合があるため、再開する予定の保険会社へ確認することをおすすめします。

●車両を新規取得した日から1年以内に再開すること
車両を新規取得した日から1年以内に中断証明書を使用して契約を開始する必要があります。この期間を過ぎると中断証明書を利用できません。

●中断証明書が、保険会社や共済によって発行されていること
保険会社または全労済、全日本火災共済(旧中小企業共済)、JA共済、全国自動車共済から中断証明書が発行されている必要があります。

●中断証明書の有効期限内であること
中断証明書の有効期限は最長10年間です。この期限を過ぎると無効となるため、再開時期には注意が必要です。

●中断証明書に記載の車と新しく再開する車の用途車種が以下のいずれかに該当すること

  • 自家用普通乗用車
  • 自家用小型乗用車
  • 自家用軽四輪乗用車
  • 自家用小型貨物車
  • 自家用軽四輪貨物車
  • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
  • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
  • 特種用途自動車(キャンピング車)

車検切れや盗難、海外渡航により中断した場合は、同一車両での再開も可能です。

●中断証明書をほかの契約で使用していないこと
中断証明書は1度しか利用できません。

●再開時の契約の記名被保険者が中断証明書に記載の記名被保険者本人または配偶者、それらの同居の親族であること

●車両所有者が中断証明書に記載の車両所有者と同一、もしくは記名被保険者本人または配偶者、それらの同居の親族であること

これらの条件を満たさないと、中断証明書を利用しての再開が認められない場合があります。

なお、一部の保険会社では、重度の傷病を事由として発行された中断証明書は利用できない場合があります。

また、再開する際も手続きや必要書類についても注意点があります。

5-2.再開方法

自動車保険を再開する際は、まず中断証明書と契約を再開する車の車検証のコピーを準備し、再開を希望する保険会社に連絡します。

手続きは電話、インターネット、書面などで行います。保険会社によっては追加書類が必要な場合もあるため、事前に確認しておくとスムーズです。なお、中断証明書を紛失した場合は、発行した保険会社で再発行の手続きができます。

6.自動車保険を再開する際の注意点

中断証明書を利用して自動車保険を再開する場合、いくつかの注意点があります。証明書の有効期限をはじめ、満たすべき条件を事前に確認しておくことが重要です。

6-1.中断証明書の有効期限に注意

多くの保険会社では、中断証明書の有効期限が10年と定められています。この期限を過ぎると、保存した等級は無効となり、再開時の契約は6等級からのスタートとなります。保険を再開する際は、必ず手元の中断証明書の有効期限を確認しましょう。

7.自動車保険の中断証明書に関するよくある質問

中断証明書について、よくある質問とその回答をまとめました。手続きを始める前に確認しておきましょう。

Q1.中断証明書の発行に費用はかかりますか?

A.中断証明書の発行手続きに費用はかかりません。無料で発行してもらえます。ただし郵送で手続きを行う場合は、必要書類の郵送費用や、電話で手続きをするときの通信料などは、自身で負担する場合があります。

Q2.中断証明書を紛失した場合、再発行は可能ですか?

A.万が一紛失してしまった場合でも再発行は可能です。再発行の手続きは、保険会社によって異なりますが、電話やインターネット、書面などで依頼できます。ただし、再発行には時間がかかることもあるため、保険の再開を急いでいる場合は早めに手続きを行いましょう。

Q3.中断する契約の等級が6等級の場合は?

A.中断証明書を発行するには、中断する契約のノンフリート等級が7等級以上であることが原則です。ただし、無事故で満期を迎える契約であれば、6等級でも発行できる場合があります。

一方、保険期間中に事故を起こして等級が下がった場合、再開する契約の等級が6等級以下となるときは中断証明書を発行できないため、自身の等級と事故の有無を事前に確認しておきましょう。

Q4.中断証明書は親族でも使えますか?

A.中断証明書は、原則として記名被保険者の配偶者や同居の親族であれば使用できます。

ただし、保険会社によっては条件が異なる場合がありますので、詳しくはご加入の保険会社に確認してください。

Q5.中断証明書は他社からの乗換えでも適用されますか?

A.中断証明書は、現在契約している保険会社だけでなく、他社の保険会社に乗換える際にも利用できます。再開したい保険会社に中断証明書を提示することで、中断前の等級を引継いだ契約が可能です。

8.車を手放したり、海外渡航する際は中断証明書の取得を忘れずに

自動車保険の中断証明書は、車に乗らない期間があっても等級を保存し、将来の保険料負担を軽減するための有効な制度です。車を手放す、海外に長期滞在するなど、車に乗らない期間が生じる場合は、発行を忘れてしまうことのないよう、必ず手続きを行いましょう。

また、必要書類や条件は保険会社によって異なるため、不明な点があれば、必ず加入している保険会社に直接確認することが大切です。