他車運転特約とは?
補償範囲や補償対象外となるケース等を解説

他車運転特約とは?補償範囲や補償対象外となるケース等を解説

他人から借りた車で運転中に起きた事故を補償するのが、「他車運転特約」です。他車運転特約の特徴や補償範囲、補償対象になる車種や運転者、補償されないケースなどについて見ていきましょう。

他車運転特約とは、他人の車を運転中の事故も補償する特約

他車運転特約は、他人から一時的に借りた車で運転中に事故が起きた場合に、借りた車を自分の車とみなし、自分自身が契約している自動車保険から補償する特約です。

通常、借りた車とはいえ、事故が起きたときにはその車に付いている自動車保険の補償(運転者の範囲を限定していない場合)を使うのが基本です。ただし、借りた車の自動車保険を使うと、車を貸してくれた人の自動車保険の翌年度の等級が下がって保険料が上がり、相手に対して経済的な負担をかけることになります。

そのようなときに、自分の自動車保険から他車運転特約の補償を使えれば、車を借りた相手に対して精神的な負い目を感じずに済むでしょう。車を借りたときの事故リスクを、自分自身の自動車保険でカバーできることが、他車運転特約の特徴ともいえます。

他車運転特約の補償が適用されるのは、一時的(臨時)に他人から借りた車を運転中に起きた事故です。例えば、「引越しのために1日だけ知人から借りた車での事故」「友人の車でドライブ中に交代しながら運転していたときの事故」などのときに補償を受けられます。

また、他車運転特約で補償される他人の車とは、下表のような車が該当します。

■他人の車の例

  • ・友人や知人から借りた車
  • ・実家に帰省中に親から借りた車
  • ・別居している子どもから借りた車
  • ・別居している兄弟や姉妹から借りた車
  • ・車検などで車を預けている間の代車やレンタカー

他車運転特約は、保険会社によっては「他車運転危険補償特約」などと呼ばれ、一般的にほとんどの自動車保険には、この特約が自動的にセットされています。

友人や知人の車を借りて運転する機会があるときには、自分自身で加入している自動車保険に他車運転特約が付帯されているかどうか、念のために確認するとよいでしょう。

他車運転特約の補償範囲

他車運転特約の補償は、あくまでも自分自身が契約している自動車保険と、同様の補償内容です。他人を死傷させたときは「対人賠償」、他人の車や物を壊したときには「対物賠償」から補償されます。

賠償額についても、自分自身の保険で対人賠償を無制限で契約していれば、他車運転特約での対人賠償も無制限で補償されます。

■他車運転特約の補償範囲

損害の種類 対応する保険 補償の限度額
他人を死傷させた 対人賠償責任保険 契約時に設定した、自身の自動車保険の保険金金額が上限
他人の車や物を壊した 対物賠償責任保険
自分や同乗者が死傷した 人身傷害保険
借りた車を壊した 車両保険 自分自身が車両保険を契約していて、かつ契約条件が車両保険の条件を満たす事故の場合に、借りた車の時価が補償の上限

他車運転特約の対象となる車種

他車運転特約で補償される車種は限定されています。すべての車種が補償の対象になるわけではなく、補償されるのは以下の自家用8車種のみです。

■補償対象になる車種(自家用8車種)

  • ・自家用普通乗用車
  • ・自家用小型乗用車
  • ・自家用軽四輪乗用車
  • ・自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
  • ・自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
  • ・自家用小型貨物車
  • ・自家用軽四輪貨物車
  • ・特種用途自動車(キャンピング車)

ただし、上記の自家用8車種であっても、記名被保険者(車を主に使用する人)や、配偶者および同居の親族などが所有する車の事故は補償されません。例えば、配偶者の車を借りて事故が起きたときは補償の対象外です(配偶者の車が「家族限定」などであれば、配偶者の自動車保険から補償されます)。

他車運転特約で対象となる運転者の範囲

他車運転特約で補償される運転者の範囲についても、条件が設定されています。補償対象になる運転者は一般的に下表のとおりです。

■補償対象になる運転者

補償対象になる運転者(運転者が限定されていない場合)
記名被保険者 自動車保険を契約している車を主に使用する人
記名被保険者の配偶者 上記の配偶者(妻や夫)
記名被保険者または配偶者の同居の親族 上記の人と同居している親族
(子どもや祖父・祖母)
記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子 離れて暮らしている結婚歴のない子ども

ただし、「30歳以上」などの年齢条件や、「本人・配偶者」などの運転者限定をつけて契約している場合には、その範囲内の運転者のみが補償対象になります。

例えば、運転者の年齢条件を30歳以上で契約していて、26歳の同居の子どもが友人の車を借りて起こした事故などのケースは補償されませんので、注意してください。

他車運転特約で補償の対象外になるケース

他車運転特約で補償されないケースについても確認しておきましょう。具体的には、下記のような事故では補償の対象外になります。

常時借りている車での事故

他車運転特約で補償されるのは、「引越しで荷物を運ぶために1日だけ借りた」「旅行のために数日間借りた」など、あくまでも一時的(臨時)に借りた車で起きた事故です。1か月や1年など、常に車を借り続けていて起きた事故は、補償の対象外になります。

駐車中や停車中に起きた事故

他車運転特約は、一般的に走行中に発生した事故が補償対象になっており、車を駐車中などに起きた事故は対象外です。例えば、駐車場でドアを開けたときに、隣に駐車している車を傷つけたようなケースや、駐車中に当て逃げされたなどの事故は補償されません。

運転者限定や年齢条件による補償の制限

補償される運転者の範囲の項目でも説明しましたが、自動車保険に運転者限定や年齢条件を付けて契約している場合は、他車運転特約の補償も同様の範囲になります。例えば、運転者を「本人・配偶者」で契約している場合では、同居の子どもが借りた車で起こした事故は補償されません。

無断で借りた車や会社の車での事故

所有者の許可を得ずに、無断で車を借りたときに起きた事故は補償されません。また、会社の車を業務として使用していたときに起きた事故も対象外です。

他車運転特約で補償を受けた場合、等級はどうなる?

他車運転特約で補償を受けた場合に、自分の保険の等級がどうなるのかは気になる点ではないでしょうか。結論から言えば、翌年度の等級は下がることになります。

他人から借りた車での事故とはいえ、事実上、自分自身の自動車保険を使うことになるため、等級についても、自分の車での事故で保険を使った場合と同様の取扱いになります。

仮に対人賠償保険、対物賠償保険を使った場合には、3等級ダウンの事故となって翌年度の等級は3つ下がり、事故有係数は翌年度から3年間適用されます。また、等級が下がれば、保険料にも影響があります。

なお、レンタカーを借りていて事故が起きた場合には、レンタカー会社で契約した自動車保険の補償でカバーできる事故なら、そちらの保険を優先して使えば自分自身の自動車保険の等級に影響しません。レンタカーの自動車保険に付けた補償でカバーできない場合に、他車運転特約を使うのが賢明と言えるでしょう。

他車運転特約があれば他人の車で起きた事故にも対応

自動車保険は、基本的に「車」に付ける保険のため、借りた車で事故が起きた場合には、その車についている保険の補償を使うのが原則です。

とはいえ、友人の車でドライブ中の事故で友人の車に付いている自動車保険を使うと、等級が下がって友人に経済的な負担をかけてしまいます。このようなときでも、自分自身の自動車保険に他車運転特約が付帯されていれば、自身の自動車保険を使う選択肢を持つことができます。

自動車保険を契約するときには、他車運転特約がセットされているかどうかを事前に確認してから契約するようにしましょう。ソニー損保を始め、多くの保険会社で他車運転特約が自動車保険に標準で付帯されています。

ただし、他車運転特約があったとしても、車を常時借りているケースや、車の種類・運転者によっては、補償されないこともあります。契約前には、自動車保険の「約款や重要事項説明書」をよく確認するようにしましょう。