貧血を予防しよう。 健康診断でヘマトクリットが低いと言われたら
ヘマトクリットは血液中の血球体積比を示す数値です。ヘマトクリットが低いと言われたら、貧血気味になっているかもしれません。
1.ヘマトクリットとは?
ヘマトクリットとは、血液中に血球の体積がどれだけの割合で存在するかを示す数値です。
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血液は赤血球・白血球・血小板といった細胞成分および血しょうで構成されています。ヘマトクリットはそんな血液中の血球(細胞成分)の体積比を示す数値です。血球の体積比としていますが、血球はそのほとんどが赤血球であるため、実際には赤血球比として考えられています。
健康診断では、採取した血液を画像のように遠心分離機で固形成分と液体の血しょうとに分離し、固形成分の中の血球の割合を測定します。ヘマトは「血液」、クリットは「審判」を意味するギリシャ語から来ています。
ヘマトクリットが低い場合に考えられること
ヘマトクリットが低い場合は、いわば血液が薄い状態、すなわち赤血球が少ないことを示しているため、まずは貧血が疑われます。貧血の原因はさまざまで、胃粘膜の収縮が原因の悪性貧血、骨髄の異常で難病にもなっている再生不良性貧血などのほか、がんなどが原因となっていることもあります。
高い場合も注意
ヘマトクリットが高い場合は、血液が濃く、ドロドロになっていることを示しており、多血症の症状が疑われます。多血症には嘔吐や下痢などによる脱水で見かけ上の多血になっている相対性多血症と、骨髄の異常による真性多血症があります。前者であれば原因となる症状が解決されれば自然と元に戻りますが、後者の場合は専門医による治療が必要となります。
2.貧血は予防できる?
ヘマトクリットが低く、貧血が疑われたかたは赤血球数やヘモグロビンなどの値も一緒にみてください。そのすべて、とくにヘモグロビンが低いかたは貧血状態であるといえます。
貧血の原因としては先述したとおり、色々な原因が考えられますが、その一部は予防することができます。
ここでは貧血の原因として多いとされている鉄欠乏性貧血を例にあげます。
女性に多い鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は、女性に多い症状です。一説では日本の全女性のうち実に8%が貧血状態であるともいわれます。これは月経のために体外に出る血液の量が多いことに加え、無理なダイエットなどにより鉄分が不足するケースが多いことが原因であるとされています。
鉄欠乏性貧血の状態が続くと危険なことも
けん怠感・動悸・息切れ・体力低下・脱毛・頭痛・めまい・立ちくらみなどが諸症状として現れます。また、特に注意したいのが爪の状態です。爪が薄くなり、先端部分がスプーン上に反り返る状態がしばしば見られます。
鉄分を積極的に摂ろう
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鉄分には2種類があります。一つは動物性食品に多く含まれており体内での吸収率が高いヘム鉄。もう一つは植物性食品に多く含まれており吸収率が低い非ヘム鉄です。
ヘム鉄は主にカツオ・マグロ・イワシ・レバー(牛・豚・鶏)・赤貝などに、非ヘム鉄はほうれん草・小松菜・ひじき・あさり・カキ・卵などに多く含まれています。
非ヘム鉄はそのままでは吸収率が悪いものの、ヘム鉄と一緒に摂取することで吸収率がアップするという特徴があります。このため、貧血が気になるときはレバーのソテーにほうれん草を炒めてつけあわせるとよいでしょう。
また、ヘム鉄と非ヘム鉄同士だけでなく、良質なたんぱく質やビタミンCを含む食材を一緒に摂取することでも鉄分の吸収効率はアップします。レバーにはたんぱく質が、小松菜にはビタミンCが多く含まれているので、単独で食べるだけでも鉄分の吸収をより高めることができます。また、ほうれん草は特に冬に採れたものにビタミンCが多く含まれています。
このような食材を日々の食事にうまくとりいれて、貧血の予防をはかっていきましょう。ありふれている貧血ですが、「女性は貧血になりやすいから仕方ない」とそのまま放置しておくのは避けるべきです。
おわりに
健康診断でヘマトクリットに問題ありと診断されたら、貧血の状態となっている可能性があります。特に女性は貧血であることが多いですが、指摘されたら一度は医療機関を受診することをおすすめします。また日ごろから貧血を指摘されないような食生活を心がけてみましょう。
- この内容は医師の監修のもと制作していますが、健康に不安のある場合は、正確な診断・治療のために医療機関等を受診してください。
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