健康診断で、ヘモグロビン値が高い・低いと言われたら?
ヘモグロビンの数値なんて、普段はまったく意識しませんよね。でも、健康診断でその数値が高い・低いと言われたらどうすればよいのでしょうか?
1.ヘモグロビンとは?
ヘモグロビンとはいったいどのような物質なのでしょうか?
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「人間の血が赤いのはヘモグロビンが含まれているため」などと学校で習った記憶のある人は多いかもしれません。
ヘモグロビンとは人間の血液中に含まれているたんぱく質の一種で、主に鉄を含む「ヘム」とたんぱく質でできている「グロビン」からできています。このうち「ヘム」は酸素と結びつく力が強く、全身に酸素をいきわたらせる大切な役割を担っています。血液が赤いのもこのヘムが赤色素を持っているからです。
2.ヘモグロビンの数値が低いと言われたら 貧血かも?
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そんな大切なヘモグロビンですが、もしも「ヘモグロビンの数値が低い」と言われたら貧血かもしれません。思い当たる症状がないか、探してみましょう。
貧血の原因の多くは鉄分不足
ヘモグロビン不足の主な原因は、鉄分不足によるものです。ヘモグロビンのうち「ヘム」は鉄でできているため、鉄分がなければヘモグロビンを作り出すことはできません。
鉄分不足による貧血は鉄欠乏性貧血といいます。鉄分が不足する原因はさまざまですが、多いのは無理なダイエットやインスタント食品などを多く食べることによって食生活が乱れ、栄養バランスが崩れることにあります。また妊娠中や産後の女性は鉄分が多く必要となるため貧血になりやすいほか、思春期の女子は急激な成長に対して血液量が足りずに貧血になることが多くあります。
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また、潰瘍やがん、あるいは月経過多などによって出血が多い場合も、鉄分不足による貧血になりやすいです。貧血は女性に多く、成人男性が貧血を起こしている場合はまず消化管からの出血が疑われます。
貧血のその他の原因
その他のヘモグロビン不足および貧血としては、骨髄の造血機能が低下することによるもの(再生不良性貧血とよばれ、難病とされています)、ビタミンB12や葉酸の不足によるもの(悪性貧血)、通常120日程度とされる赤血球の寿命がそれより短くなってしまうことによるもの(溶血性貧血)などがあります。
貧血の様々な症状
貧血の症状というと「立ちくらみ」のイメージがありますが、実は貧血が起きると様々な症状が現れます。
頭痛・慢性的な疲労・動悸・日中の眠気・睡眠をとっても疲れが取れない・むくみ・顔色が悪い・抜け毛・寒気・吐き気・食欲不振・肩こり。一つ一つは何気ないものですが、こうした様々な症状は貧血が元凶となって引き起こされている可能性があります。
もしも健康診断で「ヘモグロビンの数値が低い」と言われたら、こうした症状が出ていないか日常生活を振返ってみましょう。今まで「仕事の疲れのせい」「年齢のせい」と片付けていた症状は、もしかしたら貧血によるものかもしれません。
爪の状態に注意
「貧血かも?」と思ったら特に注意してみてほしいのが、手足の爪の状態です。
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貧血と爪に何の関係があるの? と思われるかもしれませんが、血液の状態の悪さは爪に現れることが多いのです。爪が赤くなく白っぽい場合は、ヘモグロビンの量が足りておらずそう見えている可能性があります。また、爪が薄く割れやすくなったりする場合も爪の主成分であるたんぱく質が足りていないことを意味するため、貧血を疑う必要があります。
その他、爪の中央や先端部分にスプーンのようなへこみがある場合も、貧血になっている可能性があります。
立ちくらみ、貧血じゃなくて脳貧血かも?
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貧血というと立ちっぱなしのときや立ち上がったときに、急に立ちくらみがして倒れてしまう……というイメージがありますが、実はそれは貧血ではなく「脳貧血(起立性低血圧)」かもしれません。
脳貧血はヘモグロビンの量とは関係なく、急に立ち上がったりすると脳への血液の供給が追い付かず、脳が酸欠状態となって立ちくらみやふらつきなどの症状となって現れることをいいます。こうした場合はまず横になったりしゃがんだりして休息をとり、全身に血液がいきわたるようにしましょう。
貧血、どう治せばいい?
現代人に多い鉄欠乏性貧血を治すには、やはり鉄分を多く摂取することが重要です。
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鉄分は体内で生産されないのはもちろん、吸収される効率も悪いため、貧血気味と感じたら意識的に多く摂取することが必要です。
鉄分を多く含む食材としては、ほうれん草・レバー・ひじき・小松菜・貝類・たこ・いか・ココア・チョコレート(カカオ成分の多いもの)・ナッツ類・ごまなどが挙げられます。鉄分をより効率的に摂るためには、ビタミンCを一緒に摂ることです。バランスのよい食事を心がけましょう。
その他、ビタミンB12やヨウ酸などには造血作用があるため、一緒に摂るとよいでしょう。これらの栄養素はチーズ・大豆・ブロッコリーなどに多く含まれています。
3.ヘモグロビンの数値が高いと言われたら
逆に「ヘモグロビンの数値が高い」と言われた場合も、何らかの病気の可能性があります。
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ヘモグロビンの数値が高いことで考えられる代表的な病気としては、多血症や脱水症状などが考えられるほか、喫煙やストレスなどによっても数値は上昇します。
しかし、気をつけなければいけないのは多血症です。多血症は血液中の赤血球の量が異常に増加してしまう病気のことで、その原因によって真性多血症・続発性多血症・相対的多血症・ストレス性多血症などに分かれています。体重低下・慢性的な疲労・目の充血・身体の各所のかゆみなどの症状が現れます。
放置するといずれは脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなる怖い病気ですので、健康診断でヘモグロビンの数値が高く、思い当たる症状があったらなるべくすぐに詳しい診断を受けましょう。
おわりに
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普段は意識することはほとんどないヘモグロビンの数値ですが、その数値が低くなったり高くなったりすることで、身体は意外なほど多くの影響をうけます。ヘモグロビンの数値が気になったら日常生活を振返ってみましょう。
- この内容は医師の監修のもと制作していますが、健康に不安のある場合は、正確な診断・治療のために医療機関等を受診してください。
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