「沈黙の臓器」肝臓の状態を示すバロメータ、AST(GOT)・ALT(GPT)を知ろう

肝臓は重要な臓器ですが、異常が起きていても自覚症状が出にくいという特徴があります。 AST(GOT)・ALT(GPT)は肝臓の状態を示すバロメータの一つです。

1.肝臓のはたらき

多様な機能を持つ肝臓

健康な肝臓と不健康な肝臓
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肝臓は、「アルコールを分解する臓器」と思われるかたが多いかもしれません。しかし実際には、肝臓は人間の身体の中でも最も大きな臓器であり、多様な機能を持っている大変重要な器官です。

肝臓が持つ機能には下記のものがあげられます。

  • 消化を助ける胆汁の生成。
  • 人体にとってのエネルギー源であるブドウ糖をグリーコーゲンに変えて貯蔵する。
  • アルコール・ニコチン・アンモニアなどの有害な物質を中和する。

ここであげたものはほんの一部にすぎません。日本人工臓器学会によれば、肝臓には判明しているだけでも500以上の機能があり、他の臓器と違って人工的に補うのは難しいとされています。そのため、肝臓は「人体の化学工場」とも呼ばれています。

病気に気づきにくい肝臓

多様な働きを持つ一方で肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、病気になってもなかなか自覚症状が現れない器官でもあります。

これには、他の臓器にはあまり見られない肝臓特有の再生力の強さが関わっています。東京大学分子細胞生物学研究所によると、マウスの肝臓のうち70%を切除した場合、なんと一週間程度もあれば元通りの重量を回復し、その機能も元通りになるそうです。


このような回復力があるがゆえに、肝臓には「何らかの障害が発生しても症状として異常が出にくい」という弱点があります。加えて、肝臓には痛みを感じる神経がありません。自覚症状が出始めた時には、すでに肝臓の状態は相当に悪くなっている可能性があるといえます。

2.AST(GOT)・ALT(GPT)とは?

健康な肝臓を提示する医者
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肝臓の状態を把握するためには、定期的な健康診断が欠かせません。ここでは肝臓の状態に関わる数値であるAST(GOT)とALT(GPT)について簡単に解説します。

AST(GOT)・ALT(GPT)とは

AST(GOT)・ALT(GPT)は、ともに肝臓の細胞の中にある酵素です。正式には、 ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼといいます。ちなみに、酵素とは体内で化学反応が起きる際の触媒となるたんぱく質のことを指します。

AST(GOT)・ALT(GPT)はなんらかの異常で肝細胞が壊れると、血液の中に漏れ出してきます。

AST(GOT)・ALT(GPT)の基準値

AST(GOT)・ALT(GPT)の測定には、ともにU/Lという単位が使用されます。基準値は各病院や検査機関ごとに多少ばらつきがありますが、厚生労働省の定める「標準的な健診・保健指導に関するプログラム」においては、30U/L以下であれば問題のない基準範囲内とし、31U/L以上を「保健指導判定値」であるとしています。さらに51U/L以上になると「受診勧奨判定値」となり、精密な検査が必要となります。

AST(GOP)・ALT(GTP)の異常値から考えられること

先述した通り、AST(GOT)・ALT(GPT)はともに肝細胞の中に多くふくまれていますが、ALT(GPT)は肝臓以外の臓器にはあまり存在せず、AST(GOT)は心筋などの筋肉や赤血球の中にも存在するという違いがあります。そのため、ALT(GPT)は特に急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変・脂肪肝などの肝臓の病気で高くなり、AST(GOT)はそうした肝臓の病気に加えて心筋梗塞や筋肉の広範囲な障害などの病気で高くなることがあります。そこで、AST(GOT)とALT(GPT)で異常値が出た場合、AST(GOT)/ALT(GPT)の比率も重要になってきます。

健康診断でAST(GOT)・ALT(GPT)の異常値を指摘されたら、まずは肝臓の専門医に相談することをおすすめします。

肝臓の病気を予防するためには

肝機能障害は生活習慣によって起きることが多く、アルコールの摂取量を控えて休肝日を作ること、適度な運動をすること、体重を減少させることなどが肝臓の病気予防につながります。肝機能に問題があると診断されたら、医師の指導のもとで生活習慣をあらため、病気の予防・改善を目指しましょう。

おわりに

肝臓は異常に気づきにくい沈黙の臓器です。普段から臓器に無理をさせないことを心がけ、定期的な健康診断を受けることで病気を予防しましょう。

  • この内容は医師の監修のもと制作していますが、健康に不安のある場合は、正確な診断・治療のために医療機関等を受診してください。