健康診断で数値が高かったら糖尿病に注意。HbA1cとはいったい何?

健康診断の数値の一つにHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)があります。健康診断を活かして実は怖い病気である糖尿病を予防しましょう。

1.HbA1cとは?

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)とは、健康診断において、その人が糖尿病である可能性があるかどうかを判別する数値です。

HbA1cの概要

HbA1cの検査をしているところ
Jarun Ontakrai/Shutterstock.com

人間の血液に含まれている重要な成分の一つにヘモグロビンがあります。ヘモグロビンは主に鉄でできているヘムと、たんぱく質でできているグロビンの2つが結合した成分です。ヘモグロビンは肺で酸素と結びつき、末梢神経を介して全身に酸素を行きわたらせる働きをしています。


「人間の血が赤いのはヘモグロビンが含まれているから」ということを学校で習った方も多いのではないでしょうか。これはヘモグロビン中のヘムが赤色素であるためです。

酸素と結合して全身に届ける役目のあるヘモグロビンですが、その一方で血液中の糖とも結合しやすいという性質を持っています。このような糖と結合したヘモグロビンには糖の種類によっていくつかの呼び名がありますが、そのうちブドウ糖(グルコース)と結びついたものを特にHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)と呼びます。

血糖値とは何が違うのか

血液の中の糖の量を測る数値として、血糖値というものがあります。近年では「血糖値を下げる食品」などが普及しており、名前を聞いたことのある方は非常に多いかと思います。しかし、HbA1cの数値と血糖値とでは何が違うのでしょうか。


血糖値とは、血液中の糖の濃度を指します。両者の大きな違いは、血糖値は短期的に上昇したり下がったりするのに対し、HbA1cの数値は何ヵ月間もの間変動することがないことです。血糖値は食後はすぐに高くなりますが、HbA1cは運動や食事などの要因で即座に上がったり下がったりすることはなく、1ヵ月以上も同じ数値が続きます。


HbA1cの数値を測ることは、すなわち測定日から1〜2ヵ月の間のHbA1cの平均値を測ることなのです。このため、血糖値は主に朝、空腹の状態で測るのに対してHbA1cはいつどんなときでも測ることが可能です。

HbA1cの数値

HbA1cの数値の表記方法にはいくつかの種類があり、日本においてはJDS値と呼ばれる表記が普及していました。ですが、この表記を採用しているのは世界で日本のみであったため、日本の論文と海外の論文で齟齬が生じるなどの問題が起きていました。そこで日本糖尿病学会では、2012年から従来のJDS値を新たに国際標準であるNGSP値に切り替えることを決定しています。


細かい計算式は省きますが、NGSP値は従来のJDS値に0.4を足した数値となっています。

HbA1cの正常値

日本糖尿病学会によると、HbA1cの数値はNGSP値で6.0%から6.4%であれば「糖尿病の可能性が否定できない」、6.5%以上であれば「糖尿病が強く疑われる」とされます。


また、すでに糖尿病の診断が下されている場合については、網膜や腎臓、あるいは脳や心筋などに引き起こされる可能性のある合併症を予防するために、HbA1cの数値を7.0%未満にコントロールすることが目標とされています。このことは2013年に熊本県で行われた日本糖尿病学会の年次集会において提言されたため、熊本宣言と呼ばれています。

2.怖い病気である糖尿病、その概要について

HbA1cが糖尿病を予防するための検査項目であることがわかりました。


それでは、糖尿病とはどんな病気なのでしょうか。生活習慣病の代表格といわれる糖尿病ですが、その怖さはまだまだ知られていません。

概要

市松模様に組み上げた角砂糖
florin oprea/Shutterstock.com

炭水化物は脂質やたんぱく質と並んで私たちの身体に必要不可欠な栄養素で、糖や糖類とも呼ばれます。炭水化物は主に白米・パン・麺類・いも類・果物などに多く含まれています。炭水化物は体内で分解されてエネルギーとなり、特にブドウ糖(グルコース)は脳の働きにとって重要な役目を果たしています。

しかし、炭水化物(糖)の取りすぎは身体にとって悪い事態を引き起こします。血糖値が血液中のブドウ糖の濃度を示す数値であることはすでに説明しましたが、このブドウ糖を処理してエネルギーに変えるのが膵臓のランゲルハンス島とよばれる細胞から分泌されるインスリン(インシュリン)です。


このインスリンの働きが何らかの原因によって阻害され、ブドウ糖の処理がうまくいかなくなるのが糖尿病です。初期はほとんど自覚症状がありませんが、やがて命にも関わる深刻な症状を呈します。

症状

糖尿病は、最初のうちは自覚症状はほとんどなく、尿に糖が出る状態が続くのみです。病気が進行すると多尿(トイレの回数が増える)・多飲(水を多く飲む)・体重の減少・倦怠感などの症状が現れますが、こうした自覚症状が出ている時には、すでに糖尿病が進行していることを示しています。


糖尿病になると血液中に糖が増え、血行が悪くなってやがて血管を傷つけるようになります。それが原因となり様々な合併症を引き起こします。糖尿病の怖いところは、糖尿病そのものよりもむしろ合併症にあります。


特に糖尿病神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病腎症の3つは三大合併症と呼ばれており、恐ろしい症状を引き起こすことで知られています。

糖尿病神経障害は血行不良による神経障害によって手足にしびれなどが起こり、悪化すると壊死を起こして下肢の切断が必要になることがあります。


糖尿病網膜症は眼球表面の網膜にある毛細血管が詰まり、視力が低下して失明に至ることもあります。厚生労働省によると、成人における失明の原因の第1位がこの糖尿病網膜症です。


糖尿病腎症は、発症すると腎臓において血液の老廃物をろ過する役割をもっている糸球体と呼ばれる部分の血管が糖尿病によってうまく機能しなくなり、老廃物を処理できなくなります。腎臓の機能が低下すると最終的には人工透析が必要となります。

三大合併症以外にも、心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化に由来する深刻な合併症も糖尿病は引き起こします。「糖尿病=尿が甘くなる病気」とも思われがちですが、尿に糖が出て甘くなるのはあくまで症状の一つであり、血液に糖が多くなることで引き起こされる症状の方が重要であることを覚えておきましょう。

原因

糖尿病には主に2つの種類がありますが、圧倒的に多いのは生活習慣に原因のある2型糖尿病と呼ばれる糖尿病です。

糖尿病のうち、1型糖尿病は自己免疫疾患などの原因によって膵臓のインスリン分泌機能が低下して起きる糖尿病です。一方、2型糖尿病は糖尿病の大部分を占めており、単に糖尿病というとこの2型糖尿病のことを指すケースも多いです。その他、妊娠などが原因で糖尿病が起きることもあります。


2型糖尿病はいわゆる生活習慣病であり、過食や野菜不足などの偏った食生活・運動不足などのよくない生活習慣を続けることによって発症します。特に食生活が与える影響は大きく、日本においては近代に入って食生活が急速に欧米化し、脂質や炭水化物を多く含む食事を日常的に取るようになったことが糖尿病、およびその予備軍が増加した大きな原因になっているといわれています。

治療

糖尿病そのものは、現在では確たる治療法が確立されておらず、一度罹患したら完治しない病気とされています。そのため、糖尿病の治療はいかに合併症を抑え、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を確保するかが鍵となります。


ここで大事になってくるのが、HbA1cの数値です。先に紹介した「熊本宣言」では、合併症予防のためにはHbA1cを7.0%未満に保つことが推奨されています。糖尿病の治療は医師の指導のもとできちんとした食事や運動を行い、インスリンの注射や必要な薬物の投与も行いながらHbA1cの数値をコントロールしていくことが重要です。

予防するためには

コーラと角砂糖を見つめる子供
urbans/Shutterstock.com

糖尿病(2型)の主な原因は偏った食生活、肥満、過度なストレスなどです。特に食生活には普段から気を配り、炭水化物が中心の偏った食事をできるだけ避け、野菜を十分に取り入れるようにしましょう。また、ストレスの解消も兼ねて休日にはなるべく外に出て身体を動かしてみましょう。


最近では、糖尿病による死亡率のランキングにおいて香川県がトップであったことが報道されたことを覚えている方も多いかと思います。はっきりとした科学的根拠はないものの、その背景には日本一を誇るうどんの消費量が指摘されています。

確かに讃岐うどんはあまり噛まずに飲み込むことが多く、これが急激な血糖値の上昇を招くほか、天ぷらやおにぎりをサイドメニューにする食べ合わせも炭水化物や脂質の取りすぎに繋がっていることが考えられます。

こうした状況を受け、香川県は啓発ポスターの掲示、小学校での糖尿病予防教育をなど実施したほか、2014年には「かがわ糖尿病予防ナビ」を開設。『うどんだけじゃなく、野菜もね』といったスローガンを掲げ、うどんの付け合わせに野菜を推奨するなどの取組みを実践した結果、2016年現在では死亡率が改善する成果をあげています。


香川県におけるこうした例は、香川県民以外の人々にとっても糖尿病予防のための大きなヒントになるのではないでしょうか。

おわりに

糖尿病は一般的に考えられている以上に怖い症状を引き起こす病気です。ですが、毎日の健康を考えてきちんとした生活を行うことで予防することが可能です。糖尿病についてきちんとした知識を持ち、必要があればお医者さんの指導と診断を受けるようにしましょう。

  • この内容は医師の監修のもと制作していますが、健康に不安のある場合は、正確な診断・治療のために医療機関等を受診してください。