知られてないけれど大切な器官。甲状腺とTSH(甲状腺ホルモン)について

皆さんは甲状腺をご存知ですか。喉の前面にあるこの器官の大切な役割はあまり知られていません。健康診断におけるTSHはその甲状腺の状態を示しています。

1.甲状腺とは

甲状腺は、喉の前面に位置し、ホルモンを分泌している器官です。

甲状腺の位置を赤く示す人体のイラスト
goa novi/Shutterstock.com

甲状腺は喉の中の気管の前部に位置しており、左右対称でちょうど蝶のような形をしています(イラストの赤い部分)。ホルモンを分泌して全身に届けるとても重要な働きがあります。


しかしそうしたことは意外と知られていません。喉の中にそのような器官があること自体知らなかったという人も多いのではないでしょうか。それもそのはずで、甲状腺という器官の存在が初めて知られたのは17世紀ごろ、甲状腺の病気の治療法が確立されはじめたのは20世紀に入ってからであり、歴史は比較的浅いのです。

ホルモンとは

甲状腺はホルモンを分泌する器官ですが、そもそもホルモンとは何なのでしょうか? 簡単に解説します。

ホルモンとは、体内の各部で分泌され、身体の機能調節をしている物質のことをさします。生物の身体には内部を一定に保とうとする恒常性(ホメオスタシス)という機能があり、ホルモンは自律神経とともに恒常性の維持に役立っています。血液中の量は非常に微量ですが、大切な物質です。しかし、ホルモンの働きにはまだ分かっていない部分も多くあることも事実です。


ホルモンの一例を挙げると、すい臓から分泌されて血糖値を下げるインスリン、人の心を落ち着かせる作用があるとされ、俗に幸せホルモンなどと呼ばれているオキシトシン、男性らしい・もしくは女性らしい体つきを作る性ホルモンなどがあります。

甲状腺ホルモン

ホルモンは全身のあらゆる部分で作られていますが、甲状腺はその中でも特に重要な器官です。甲状腺は脳の下垂体という部分から甲状腺刺激ホルモン(TSH)を受取ることで、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)を分泌します。これらの甲状腺ホルモンは全身の代謝に関係する役目を担っています。


T3やT4は血液中ではたんぱく質と結合しますが、ホルモンとして機能を発揮させるのは、結合せずに残る遊離トリヨードサイロニン(FT3)と遊離サイロキシン(FT4)のほうです。

2.TSH(甲状腺ホルモン)の検査

甲状腺の検査においては、血中のTSH、FT3、FT4などを測定する項目があります。単位はTSHがμIU/ml(マイクロ・国際単位・パー・ミリリットル)、FT3がpg/ml(ピコグラム・パー・ミリリットル)、FT4がng/ml(ナノグラム・パー・ミリリットル)となっています。


これらの項目の数値が基準値を上回っていたり下回っていたりした場合、3つの数値のどれが高くてどれが低いか、それぞれの関係性を比較することで、甲状腺の病気の状態を判断します。基準値は各検査機関によってばらつきがあるため、診断の際に医師に確認してみるとよいでしょう。

甲状腺の病気

甲状腺の検査をする医者
Tyler Olson/Shutterstock.com

甲状腺の病気にかかる割合は女性のほうがずっと多いことが知られています。
甲状腺の病気のうち甲状腺ホルモンの異常が出る病気で代表的なものは、以下があげられます。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌量が低下することで起こります。甲状腺の機能が低下する原因は不明なことが多いですが、甲状腺が腫れて大きくなる橋本病といわれる病気などがあります。

甲状腺機能低下症の症状としては、顔のむくみ・眠気・皮膚の乾燥・無気力・月経異常・寒がりになるなどがあげられます。

甲状腺機能亢進(こうしん)症

甲状腺機能亢進症は、様々な原因がありますが、バセドウ病(かつてはバセドウ氏病とも)という病気が有名です。甲状腺機能低下症とは逆に、甲状腺ホルモンが過剰に分泌された状態が続くことで起こります。


自覚症状としては、動悸・息切れ・生理不順・下痢・体重減少・多汗・震え・焦燥感・不眠などがあります。目が飛び出してくる症状が有名ですが、そうなるのはかなり症状が進んだ段階です。また、思春期および更年期の女性に多い病気ですが、甲状腺の病気の中では比較的男性でも発症することが多い病気として知られています。

おわりに

甲状腺は大事な器官ですが、その働きは広く知られていません。健康診断でTSHなどの甲状腺に関するホルモンに異常ありと診断されたら、より詳しい診断をうけるようにしましょう。

  • この内容は医師の監修のもと制作していますが、健康に不安のある場合は、正確な診断・治療のために医療機関等を受診してください。