公開日:2023年11月8日
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豪雨などで河川が氾濫したり、堤防が決壊したりして起きるのが洪水です。洪水で住宅等に損害が生じたとき、火災保険に「水災」の補償を付帯していれば補償されます。以下で解説します。
洪水による損害は火災保険の「水災」で補償される
気象庁によれば、洪水とは一般に「堤防の決壊や河川の水が堤防を越えたりすることにより起こる氾濫」を指し、外水氾濫と言われることもあります。洪水により、建物や家財が浸水の被害を受けたり、さらに深刻な場合には住宅が流失したりする被害を受けることもあります。たとえ浅い浸水深であっても、ひとたび浸水すれば住宅内の設備や建具のみならず、家財も使えなくなるなど、生活再建における経済的負担は想像以上に重くなるおそれがあります。
こうした損害が生じたとき、火災保険に水災補償を付帯していれば補償されます。火災保険は火災のみならず、台風や豪雨が原因で起こる洪水で住宅等に被った損害にも役立つ保険です。
火災保険の水災で補償されるケース
火災保険に水災の補償を付帯していれば、洪水で被った以下のような損害をカバーできます。なお、床上浸水として補償されるのは、土間等を除いた居住部分の床に浸水被害が生じた場合です。
- 集中豪雨で河川が氾濫、床上まで浸水して建具に被害を受けた
- 台風により堤防が決壊、住宅損壊のみならず家具が水没して使えなくなった
- 雪融け水が大量にあふれる融雪洪水により、床上浸水の被害を受けた など
洪水のほか、集中豪雨や台風で低地に水が貯まるなどして起こる内水氾濫や、土砂災害、落石、高潮などによる損害も水災の補償対象となっています。
たとえば、以下のような損害をカバーできます。
- 集中豪雨で道路が冠水、住宅にも水が押し寄せて床上浸水の被害を受けた
- 台風で起きた土砂災害により、住宅が倒壊した
- 台風で起きた高潮により、住宅が浸水被害を受けた など
水災ではこのように、河川のそばで起こる洪水だけではなく、海沿いや内陸、山沿いなど、河川から離れたところで起きる水害も補償されます。
火災保険の水災で補償されないケース
同じ水による被害でも、地震や噴火が原因で起きる津波で住宅等が被った損害は、水災では補償されません。津波による損害は、地震保険で補償されます。地震等が原因で起きる土砂災害も同様に地震保険で補償されます。
他方、マンションの上階で発生した水漏れや、給排水設備の事故が原因で生じた室内および家財の水濡れ損害は、水災ではなく火災保険の補償のひとつ「水濡れ」で補償されます。
補償例 | 対応する 補償 |
---|---|
|
火災保険の「水災」 で補償される |
|
火災保険の「水濡れ」 で補償される |
|
「地震保険」 で補償される |
洪水などの被災時に受けられる公的な支援制度
洪水などで浸水被害を受けたり、住宅が損壊したりしたときに受けられる公的な支援制度もあります。災害時に受けられる支援制度は、災害の規模や被害の程度により異なります。被害の程度は大きいほうから「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」の6区分で、自治体による損害調査で区分認定が行われます。認定された区分は、支援制度を受けるときなどに必要になる、り災証明書(罹災証明書)に記載されます。
被災者生活再建支援制度は最大300万円
住宅被害が「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」の場合に対象となる支援には、被災者生活再建支援制度があります。住宅が被害を受けたとき支援で、住宅の損害程度で決まる「基礎支援金」と、住宅の再建方法で決まる「加算支援金」の2つで構成され、両方を合計した最大額は300万円です。
洪水などの水害で自治体が第1次調査を行うときは、一見して住宅全部が倒壊していたり、一部の階が全部倒壊していたりするのでなければ、住宅の浸水深(床上浸水の深さ)で損害区分を判定します(木造およびプレハブの戸建ての1〜2階建ての場合)。
浸水深による判定を行う場合、住宅流失または床上1.8m以上の浸水被害は全壊と認定され、100万円の基礎支援金を受取れます。床上1m以上1.8m未満の浸水被害は大規模半壊と認定され、基礎支援金は50万円です。他方、床上1m未満の被害は、基礎支援金の対象外です。
浸水深による判定基準と基礎支援金(水害による被害 木造・プレハブ住宅)
最も浅い 浸水部分 |
被災者生活 再建支援制度の 基礎支援金 |
---|---|
床上1.8m以上 (全壊) |
100万円 |
床上1m以上 1.8m未満 (大規模半壊) |
50万円 |
床上0.5m以上 1m未満 (中規模半壊) |
なし |
床上0.5m未満 (半壊) |
|
床下浸水 (一部損壊) |
最も浅い 浸水部分 |
床上1.8m以上 (全壊) |
床上1m以上 1.8m未満 (大規模半壊) |
床上0.5m以上 1m未満 (中規模半壊) |
床上0.5m未満 (半壊) |
床下浸水 (一部損壊) |
---|---|---|---|---|---|
被災者生活 再建支援制度の 基礎支援金 |
100万円 | 50万円 | なし |
※内閣府(防災担当)「災害に係る住家の被害認定基準運用指針(令和3年3月)」被害認定フロー第1次調査の内容をもとに著者作成
※世帯人数が1人の場合に受取れる支援金は3/4の金額
被災者生活再建支援制度はこのように、一定程度の被害を受けた住宅が対象です。たとえ1m未満でも、ひとたび室内に浸水被害が生じれば内装・設備や建具、家具や家電製品は使用できなくなるおそれがありますが、1m未満の浸水は支援制度の対象になりません。
他方、支援制度の対象になるときは深刻な被害を受けているわけですから、加算支援金を含め最大300万円の支援金があったとしても、生活再建には困難を伴うおそれがあります。
洪水による被害を受けて暮らしを立て直すにあたり、公的支援のみや、手元資金で対応することも難しいため、火災保険の水災による備えが重要になります。
水災の補償を受けるための3つの認定基準
水災の補償を受けるうえで知っておきたいのが、3つの認定基準です。以下のいずれかを満たすと損害額に応じた保険金が支払われます。(損害保険会社により認定基準が異なる場合があります。)
- 床上浸水が生じた場合
- 地盤面より45pを超える浸水により損害が生じた場合
- 建物や家財に再調達価額の30%以上の損害が生じた場合
居住部分の床に、床上以上の浸水損害が生じていれば、床上浸水として補償されます。床上浸水に至らない場合でも、地盤面から45pを超える浸水被害が生じていれば補償対象です。他方、浸水を伴わない土砂災害や落石被害の場合、再調達価額の30%以上の損害が生じれば補償されますが、30%に満たない損害は補償対象外です。
たとえば再調達価額3,000万円の住宅に、土砂災害で900万円以上の損害が生じれば補償されますが、900万円未満の損害では補償されません。土砂災害や落石被害で床上浸水を伴わずに30%未満の損害が起きることも考えられるので、この点には留意が必要です。
ハザードマップで居住地の洪水リスクを確認して備えよう
居住地の洪水リスクを知るには、ハザードマップを確認しましょう。ハザードマップは、一定の自然災害で生じる被害の範囲を地図上で示したものです。火山や土砂災害、高潮や内水氾濫などさまざまなハザードマップがありますが、洪水ハザードマップについてはほとんどの自治体が作成し公表しています。災害時の避難場所や避難経路、避難方法なども記載されているので、被災時や避難時にも役立ちます。市区町村のウェブサイトで確認できますが、ハザードマップは随時更新されるので、最新のハザードマップを確認するようにしましょう。
市区町村が作成するハザードマップのほか、国土交通省が作成・公表している「ハザードマップポータルサイト」もあり、こちらは広域地図で災害予測を確認できます。「わがまちハザードマップ」と「重ねるハザードマップ」の2つがあり、「わがまちハザードマップ」は市区町村が法令に基づき作成・公表したハザードマップです。地域ごとにさまざまな種類のハザードマップを閲覧できます。「重ねるハザードマップ」は、洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、さらに道路防災情報、土地の特徴・成り立ちといった情報を、地図や写真に重ねて表示できます。ウェブサイト等で情報提供されています。居住地のリスクをしっかり確認のうえ、水災の補償も見直して備えるようにしましょう。
※国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
※掲載内容は公開当時のものであり、現在と異なる場合があります。
執筆者情報 : 清水 香(しみず かおり)
1968年東京生まれ。CFP®認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。
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