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火災保険で家財の保険金額はいくらがいい?
金額の目安や決め方を解説

リビングルームの家具や家電を示すイラスト。

建物のみならず、家財も火災保険に加入することで火災や自然災害などによる損害に備えることができます。家族構成や暮らしぶりにより、どのような家財がどれくらいあるかは個々の世帯で変わってきます。この記事では、家財の火災保険金額の決め方について解説します。

家財の保険金額を決める際のポイント

建物のみならず、家財も火災保険に加入することで火災や自然災害などによる損害に備えることができます。家財には家具や電化製品、衣料品や生活雑貨、食器など、一部のぜいたく品を除き、生活に必要となる用品の多くが含まれます。
家財は少しずつ買いそろえることが多いので、総額がどのくらいか把握していない人も多いでしょう。しかし、ひとたび火災や自然災害で家財一式が失われると、必要なものを買いそろえるだけでもかなりの家計負担となります。こうしたとき、家財の火災保険金が生活再建時の支えになります。
家財の量は家族構成や暮らしぶりにより異なるので、適切な保険金額を導き出すにはわが家の家財を再取得するのに必要な金額をざっと積算するのが合理的です。しかし、家族の歯ブラシ一本から衣料品、電化製品や書籍などをすべて積算するのは、なかなか難しいものです。

家財の保険金額の目安

そこで各保険会社は、世帯主と家族構成に応じた家財の参考値(「簡易評価表」)を示しています。アンケート調査で保有家財の種類や金額に統計処理を行い、世帯主の年齢や家族構成、住宅の床面積などから所有家財の額を推定したもので、その金額は保険会社で異なります。下表はその一例ですが、独身世帯300万円、30歳前後の夫婦世帯は720万円、40歳前後の夫婦と子ども2人世帯で1,430万円などの金額が示されています。

簡易評価表による参考値
世帯主の年齢 28歳〜32歳 38歳〜42歳 48歳以上
家族構成 独身世帯 300万円
夫婦のみ 720万円 1,250万円 1,500万円
夫婦と子ども2人 900万円 1,430万円 1,680万円
夫婦と子ども3人 990万円 1,520万円 1,770万円
夫婦と大人3人 1,140万円 1,670万円 1,920万円

ソニー損保ウェブサイトより抜粋

現在の建築費をベースに保険金額を算出する建物と異なり、家財の保険金額は世帯差もあり、正確には決めにくいもの。世帯主の年齢や家族構成だけでは家財の量や質は決まらず、表内の金額を見て「多い」と思う人も「少ない」と思う人もいるでしょう。上記は推定の金額なので、あくまでも参考値。自身の暮らしぶりを踏まえ、自ら保険金額を決めて構いません。

その際のポイントは、実態に合った金額を設定することです。保険金の請求をするときは、被害を受けた家財をリストアップして、どの程度の損害が生じたか自ら申告します。受けた損害を原状回復するのが火災保険の役割ですから、実態とかけ離れて高い保険金額にしていても、その分は支払われず無駄になってしまいます。逆に少なすぎても原状回復が難しくなるため、過不足のない保険金額を設定することがポイントになるのです。
そのためには、わが家の実態をある程度把握して検討するのが、面倒であっても近道といえそうです。主だった家財の再取得金額をざっと積算してみて、わが家の家財総額の水準をつかんだうえで保険金額を設定すれば、納得感も得られるでしょう。

賃貸世帯の人も自分で内容を決められる

賃貸世帯は、賃貸借契約時に火災保険に加入した人が多いでしょう。このとき勧められる保険はおおむね、家財の火災保険に、個人賠償責任保険および借家人賠償責任保険等をセットした、2年間で数万円程度の入居者用保険です。

暮らしの安定を守り、賠償を巡る金銭トラブルを防止する観点からも、入居の際には火災保険の加入をお勧めします。ただ、契約時に提示された火災保険に加入しなくてもかまいません。特定の事業者の火災保険の加入を賃貸借契約の条件にすることは、独占禁止法上の「抱き合わせ販売」の問題となるおそれがあるため、禁止されています。「自分で火災保険に加入します」といえば、宅建業者から強く勧められるようなこともないはずです。

賃貸世帯が契約時に勧められた保険に加入する、あるいは自分で保険に加入するときも、以下の点に注意しましょう。
前述のように、家族構成や暮らしぶりにより家財の適切な保険金額は変わってきます。ところが、賃貸借契約時の家財の保険金額は、占有面積に応じた標準的な金額など、定型で販売されていることが多いです。わが家にとって適切な金額と限らないので、必要に応じてわが家の妥当値に調整してもらいましょう。

加えて、火災保険に付帯されている借家人賠償責任特約、とりわけ個人賠償責任特約については、保険金額が十分かどうか確認しましょう。個人賠償責任特約は、自転車による加害事故や水漏れによる階下への水濡れ損害など、第三者に与えた損害に対する賠償責任をカバーできる保険で、保険会社によって保険金額が異なります。

ソニー損保より補足説明ソニー損保の新ネット火災保険は、賃貸住宅にお住まいの方はお申込みいただけません。

そもそも火災保険の家財の対象とは

そもそも家財とは、建物内に収容されている本人や家族の暮らしに必要なものを指し、電化製品や家具、衣服、調理器具、自転車など多くのものが該当します(下表参照)。なお、家財であっても生活に必要でない、いわば「ぜいたく品」については、一定額までの補償としたり、契約時に申告しないと補償されなかったりすることがあります。これらに該当するのは、一個または一組30万円を超える貴金属や宝石、書画・骨とう品等です。ただ火災保険による補償は、一定の金銭補償であり、同じものを再び入手するのは困難です。大切なものをそのまま保全したいのであれば、貸金庫を利用するのが有力な選択肢になります。
他方で、家財に含まれないものもあります。自動車や動植物、有価証券、現金や印紙類、プログラムやデータなどが該当します。なお、自動車は自動車保険の車両保険に加入すれば、マイカーに被った一定の損害をカバーできます。

火災保険の家財対象になるものとならないもの
含まれるもの

建物内に収容されている本人や家族の「生活用の持ちもの」

洗濯機や冷蔵庫・テレビなどの電化製品・ベッド・ダイニングセットなどの家具・家族の衣服・キッチン電化製品や調理具・食器・楽器・PCや書籍
自転車・原動機付自転車
その他生活用品など
含まれるが、
申告が必要な場合が
あるもの

生活上必要となるものではない「ぜいたく品」

貴金属・宝石、書画・骨董(こっとう)品、その他美術品など
(1個または1組の価額が30万円を超えるものを指すことが多い※1
含まれないもの 自動車(自動三輪車・自動二輪車含む)、
動植物、通貨、有価証券、預貯金証書※2(通帳・カード含む)、
印紙、切手類、プログラム・データ
ソニー損保より補足説明※1 ソニー損保の火災保険では、1個または1組ごとに30万円を限度に補償し、申込時のご申告などは不要です。

火災保険における家財について、詳しくは下記ページをご覧ください。火災保険に「家財」は必要?補償対象や家財保険と火災保険の違いなどを解説

家財の補償内容や保険金額に関するよくある質問

家財の保険金額はいくらに設定すればいい?

わが家の家財をざっと見まわし、暮らしを元に戻すのに必要な家財の購入資金がどれくらいになるのか検討しましょう。これが保険金額を設定する際のポイントになります。保険金額は高すぎてもムダになりますし、低すぎても原状回復が難しくなるので、わが家にとって実効性と納得感のある保険金額を探ってみましょう。

火災保険に家財の補償は必要ですか?

火災保険の目的は、火災や自然災害等で受けた損害を保険金でカバーし、原状回復を図ること。現在の暮らしを成り立たせている電化製品や家具、衣料品や調理器具一式を失い、これらを一気に買い揃えるとなると、いうまでもなくかなりの出費になります。速やかな生活再建を図るうえで、家財の火災保険は大きな支えとなります。また集合住宅などで、階上の世帯が起こした水漏れ損害、給排水設備の事故といった偶然な事故で受けた家財の損害にも備えることができます。

火災保険を使うと保険料は高くなりますか?

火災保険を使っても、次年度の保険料は高くなりません。保険金額の全部が支払われたり一定割合以上の損害保険金が支払われたりしない限り、契約はそのまま続き、次年度の保険料が上がることはありません。同じ損害保険でも、自動車保険では保険事故の実績などで保険料の割引・割増が決まる「ノンフリート等級制度」が導入されているため、事故を起こして保険金を受取ると、次年度以降の保険料が上がることがあります。他方、個人向けの火災保険にはこうした仕組みはありません。火災保険料は建物の所在地や構造などをベースに算出され、保険金を受取ったことが保険料の決定要素にはならないため、保険金を請求しても、次年度の保険料の増加を心配する必要はないのです

家族構成や暮らしぶりに合わせて家財の保険金額を設定しよう

日々の暮らしにあたりまえに存在する家財は、それらのどれが欠けても生活は不便になり、火災や自然災害等で家財一式を失えば暮らしは成り立ちません。家財の一定の損害には火災保険で備えておくことができます。しかし、持ち家世帯は住宅の火災保険には加入していても、家財については失念している人もいるでしょう。この機会に改めて家財の火災保険に加入しているか、適切な保険金額になっているか、確認してみましょう。家族構成や暮らしぶりに合わせた適切な保険金額を設定することが大切です。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)