屋根の修理は火災保険の対象になる?
保険金の支払可否や請求方法も解説
- この記事は、一般的な火災保険商品について説明しております。ソニー損保の新ネット火災保険の詳細はこちらからご確認ください。
大型の台風の発生が続く近年、住宅の瓦屋根などに多数の被害が出ています。瓦がずれたり、落下したり、瓦が飛散したりすれば修理が必要ですが、こうしたときは火災保険で補償を受けられる場合があります。以下で解説します。
被害の原因に対応する補償があれば屋根の修理ができる
台風や暴風・旋風などにより、屋根瓦が飛んだり、屋根が剥がれたりする被害を受けたときは、火災保険の「風災」で補償されます。
風災のほか、以下のような原因で生じた屋根の損害も補償されます。
- 大雪により屋根が崩落した→「雪災」で補償
- ひょうで屋根が破損した→「ひょう災」で補償
- 他人が操縦するドローンが落下して屋根が破損した→「物体の飛来・落下等」で補償
台風などが原因で屋根が破損して生じた、雨漏りによる損害も補償されます。建物だけでなく、家財の補償も対象とした火災保険に加入していれば、家電製品や家具などの家財の損害も補償されます。
- 雨漏りの修理に関する内容は、以下のページで解説しております。
暴風で近隣の家の屋根が飛ばされ、自宅に落下して屋根が壊れたときは、「物体の飛来・落下」ではなく「風災」で補償されます。風が原因だからです。他方、地震の揺れで屋根が崩れたり、瓦が落ちたりして一定の被害が生じた場合は、火災保険ではなく「地震保険」の範疇です。火災保険では地震による被害を免責としているため、地震や噴火、これらによる津波による損害は、地震保険を付帯してカバーすることになります。このように、損害の原因により適用される補償が変わります。
以上のように、台風やひょう、大雪などの自然災害、あるいは建物の外部からの物体の落下や飛来といった偶然な事故が原因で起きた屋根の損害の修理は、対応できる補償を付帯している場合、火災保険で修理が可能となります。
屋根の修理で火災保険金が支払われない・トラブルに注意が必要なケース
他方、屋根に損害が生じていても、保険金が支払われないのは以下のようなケースです。
- 経年劣化による損害
- 契約者や被保険者の故意・重大な過失・法令違反による損害
- 修理業者の施工不良による損害 など
火災保険は、自然災害や偶然起きた事故で生じた損害をカバーする保険ですから、経年劣化で必然に生じる損害は補償されません。当然のことですが、「経年劣化による損害は補償されない」と強く念を押さねばならないのは、「火災保険を使えば、古い屋根でも無料で修理ができる」などと、ウソの請求をそそのかす悪質業者による被害が発生しているからです。
事実ではないのにもかかわらず、災害で被害を受けたとでっちあげ、保険金をだまし取る犯罪、つまり保険金詐欺です。たとえ業者にそそのかされたとしても、ウソをついて保険金請求をするのは被保険者(建物・家財の所有者で保険金を受け取る人)であり、被保険者の故意・過失あるいは法令違反として、保険金の返還を求められて契約も解除されるかもしれません。場合によっては、被保険者自身が詐欺罪に問われるかもしれないのです。
訪問勧誘だけでなく、インターネット検索でも火災保険の請求サポート業者や修理業者がヒットします。サポートを依頼すれば、当然、手数料を請求されます。保険金の3〜4割の手数料を求めるケースも見られますが、そんなに手数料を支払っては、住宅の修理そのものが困難になってしまいます。
近年は、以下のような相談が全国の消費生活センター等に多数寄せられており、高齢者もトラブルに巻込まれています。
火災保険請求に関して寄せられた相談事例
【事例1】保険金の請求期限が迫っていると勧誘を受けた
昨日、「台風や地震で建物の被害がないか近所を調査している」と事業者が訪問してきた。
その事業者から「3年前の大型台風で損害を受けている部分があるかもしれない。火災保険の請求期限が迫っている。調査費用は無料なので、調査だけでも受けてはどうか。調査して、火災保険が利用できることが分かれば申請手続を代行し、その保険金の一定割合を手数料でもらう。保険金が出なければ負担はない」と言われた。
とりあえず調査だけでもと思い業務委託契約書に署名したが、以前保険会社に大型台風の件で問い合わせたところ、保険金の支払いは難しいと言われたことを思い出し、昨日の勧誘自体が不審に思われてきた。契約書裏面にクーリング・オフについての記載があったが、クーリング・オフできるか。
(2021年5月受付 60歳代、男性)
【事例2】インターネット広告で見つけた事業者に勧誘を受けた
「火災保険を使って屋根や外壁の工事の見積もりをする」とのインターネット広告を見つけ、事業者へ連絡を取ったところ、後日自宅に来訪することになった。訪問した事業者から「修理代を上回る保険金が受け取れる。手数料は40%だが損はない」と言われ、損がないならと契約することにした。受け取った書面には、修理箇所と損傷の程度を判断して見積もりを作成するサービスで、保険金が下りたらその40%を事業者に支払うと書いてある。よく考えると、保険会社の査定が見積もり通りとは限らないと思い、解約を申し出たが、解約できないと言われた。どうすればいいか。
(2021年4月受付 60歳代、男性)
保険金請求は自身でできますし、手数料もかかりません。近年は、LINEからの専用のチャットルームで連絡ができる損害保険会社(以下「損保会社」)が増えており、損保会社とのコミュニケーションも取りやすくなっています。疑問に思うことがあるときは、損保会社とよく話し合って解決するようにしましょう。
また、見知らぬ業者の勧誘には安易に乗らないように注意して、それでもなお困った事態に直面したら「消費者ホットライン188(いやや)」に電話しましょう。近くの消費生活相談窓口につながり相談できます。
なお、住宅の修理を業者に依頼したことで生じた施工不良等の損害は修理業者の責任ですから、火災保険の契約先には保険金の支払責任はありません。損害を及ぼした修理業者に補償を求めることになります。
被害を受けた際の保険金請求の流れ
保険金請求の時効は、損害が発生した時の翌日から3年とされることが一般的です。時間の経過に伴って、損害が生じたことの証明も難しくなりますので、事故後は損害状況を写真におさめ、速やかに損保会社へ被害の連絡をし、保険金の請求手続きをしましょう。
以下が一般的な保険金請求のフローです。
保険金請求フロー(風災・ひょう災・雪災)
- 大規模災害等の場合、上記の日数より時間がかかることがあります。
免責金額(自己負担額)を差引いた金額が火災保険金となる
支払われる保険金は、免責金額すなわち自己負担額を差引いた額になります。損害額が免責金額以下の場合は、保険金の支払対象になりません。
損保会社によりますが、免責金額には3万円、5万円、10万円などの金額に設定でき、あるいは免責金額を設定しないこともできます。免責金額を高く設定するほど、負担する保険料が抑えられるメリットがあります。
屋根の修理が必要になる前に補助制度で強風対策を
火災保険の対象となる損害が生じたら火災保険が役立ちますが、損害を未然に防止するための事前メンテナンスを行うことも重要です。
例えば、2019年の令和元年房総半島台風(台風第15号)では、千葉県を中心に、猛烈な風・雨により屋根瓦等が吹き飛ばされるなど、住宅の被害が出ました。被災地にブルーシートのかけられた住宅が立ち並んでいたのを覚えている人もいるでしょう。
住宅の規模や、どのような被害を受けるかにもよりますが、屋根の修理にはそれなりの費用がかかります。実際にソニー損保が対応した強風による屋根の被害では、「強風により屋根の板金が変形した修理」で約30万円、「強風により屋根の棟、テラスの屋根に損傷を受けた修理」で約40万円の保険金を支払った事例があります。(※)
- 保険金支払の一例です。損害によって保険金が小額・高額になるケースがあります。
台風などの強風による被害が多数発生したことを受けて、2022年1月に建築基準法の告示基準が改正されました。これにより、瓦屋根の緊結方法が強化されています。旧基準の住宅については、屋根の強風対策を講じる際に活用できる補助制度も設けられています。補助を受けられるのは人口集中地区(「DID地区」=国勢調査上の統計地区)等で基準風速32m/s以上の区域または地方防災計画等で地方公共団体が指定する区域が対象で、補助制度の内容は以下の通りです。
強風対策への補助制度(瓦屋根)
補助対象 | 補助額・補助率 | |
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瓦屋根の耐風診断 | 瓦屋根の緊結方法について、基準に適合しているかをかわらぶき技能士や瓦屋根工事技師、瓦屋根診断技師等により診断 | 診断費の3分の2 最大2.1万円/棟 |
瓦屋根の耐風改修工事 | 改正基準に適合しない瓦屋根について、所要の耐風性能を有する屋根にふき替え | 工事費の23% 最大55.2万円/棟 |
令和2年の国勢調査によると、日本の総人口の70%が人口集中地区に住んでいます。補助対象に該当するのであれば利用を検討しましょう。独自補助を行っている自治体もあり、補助の内容は上記と異なることがあります。気になる方は、居住地の自治体や国の補助金・助成金について確認してみてください。
火災保険の対象になる条件を満たしているか事前に確認
台風やひょう、大雪などの自然災害、あるいは物体の落下や飛来といった偶然の事故で受けた屋根の損害は、該当する補償を付帯している場合に、火災保険での修理が可能となります。自身の火災保険で各補償が付帯されているか事前に確認しておき、いざというときに慌てずに対応できるようにしておきましょう。
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