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新築戸建てに火災保険は必要?
加入タイミングや保険料を抑えるポイントを解説

家を両手で守っているイラスト。

住まいを新築したら、引渡し日までに火災保険の加入が必要です。住宅ローンを借入れる場合、借入先からも加入を求められるでしょう。
ただし、居住地や物件のリスクで必要な補償は異なり、加入の仕方によって保険料も変わってきます。納得のいく、わが家に合った契約ができるよう、新築戸建てにおける火災保険の考え方や注意点などを詳しく解説します。

火災保険とは?

「火災保険」は、火災や風水災、その他一定の偶然の事故などで被った住宅や家財の損害をカバーする保険です。めったに起きないことではあれ、ひとたび深刻な損害を受ければ、住宅の修繕には数千万円が必要になることもあります。そのとき手元の貯蓄だけで対応するのは難しい方も多いでしょう。また近年は、気候変動の影響から風水災などによる被害が各地で相次いでおり、自然災害に備える意味でも、火災保険の重要性はより増してきています。

火災保険とはどんな保険かについて、以下のページでも解説しています。火災保険ってどんな保険?補償内容や選び方の基本を解説

新築戸建てを住宅ローンで購入する場合、火災保険の加入は必須

火災保険には、金融機関で住宅ローンの融資を受けるときに求められて加入した、という人が多いでしょう。これには以下のような理由があります。

お金を貸す側である金融機関は通常、住宅ローン債務者の土地や建物を担保にして、債権を確実に回収できるようにしています。しかし、もし住宅ローン債務者の住宅が火災で焼失したら、建物の担保価値がなくなり債権回収が難しくなります。そこで金融機関は住宅ローン債務者に火災保険の加入を求め、いざというときの債権の保全を図っています。

隣家の火災はコントロールできない

また、火災保険は融資先の金融機関のためだけに加入するのではなく、そもそも自分の住まいを守るためのものです。火災のリスクを考えるうえで重要な観点とは、自分がどれだけ気をつけていても、隣家の火災の被害を受けるおそれがある、ということです。住宅街など建物が密集している場合はとりわけリスクが高いといえるでしょう。つまり、「もらい火」のおそれがなくなることはなく、さらにその際に受けた損害は、原則として火元から賠償を受けられません。

民法709条では、他人に損害を与えて法律上の損害賠償責任を負うときは、被害者に損害を賠償しなければならない旨が定められています。他方、民法の特別法である「失火ノ責任ニ関スル法律(通称:失火責任法)」は、失火について民法709条の規定を打ち消しています。失火責任法は、火元に重大な過失がない限り、延焼被害を及ぼした場合でも火元の賠償責任を免除すると規定しています。

隣家の火災はコントロール不能のリスクであり、誰もが火災保険に加入して自衛する必要があります。

住宅ローン残債が多いほど火災保険は重要

住宅ローン返済中に住宅が損害を受ければ修繕費用が必要となる一方、住宅ローン返済はその後も続きます。こんなとき、まとまった火災保険金があれば修繕費用が賄え、住宅ローンを負担しながら生活再建を図ることもできるでしょう。

火災保険の加入は法律上の義務ではありません。しかし、上記の理由から、住宅ローン残債が多いほど火災保険はマイホーム維持のためとりわけ重要になります。可能な限り事前に調べて比較検討し、わが家に合った適切な内容で加入しましょう。加入するのは借入先の金融機関等で勧められた火災保険でなくても問題はありません。

火災保険に加入するときの注意点

新築戸建てを取得して火災保険に加入するとき、どのような点に注意すればよいか、いくつかのポイントをお伝えします。

保険金額に土地代は含まれない

住宅ローンの融資を受けるときに求められるのは、住宅すなわち “うわもの(土地の上に建っている建物)”を対象にした火災保険です。ここには門や垣、自家用車専用車庫や物置、一定の機械設備などが含まれることが一般的です。

住宅建物に含まれるもの

  • 門、塀、垣、自家用車専用車庫
  • 家財を入れる物置、家庭用燃料電池など

“うわもの”が対象ですから、土地代や諸経費込みで住宅ローンを借りた場合でも、これらは火災保険金額には含まれません。よって、火災保険金額が借入額を下回ることもあります。
もちろん、火災保険が適正に契約されていれば、火災等で損害を受けたときに住宅再建しうる火災保険金を受取ることはできますが、その金額が必ずしも借入残高を清算できる額にならない点には注意が必要です。

新築住宅の保険金額は再調達価額で過不足なく設定すること

保険料がいくらになるかも気になる点でしょう。無駄のない保険料で、損失に対する十分な補償を受けるには、同等の住宅を再建するために必要な「再調達価額」ベースの保険金額で、過不足なく契約しておく必要があります。(=全部保険)
火災保険金額を適切に設定することは、十分な補償を受けるための重要事項のひとつです。それは、火災保険の役割が、災害等で生じた建物や家財の損失の穴埋めであることに関係します。

たとえば、火災保険金額を3,000万円に設定したとしても、再調達価額2,000万円の住宅が全焼したときの損害額は2,000万円です。損害額以上の保険金は支払われません。1,000万円分多く支払った保険料が保険金に反映されることはなく、保険料が無駄になります(=超過保険)。火災保険をかけすぎても、得することはありません。

火災保険における「保険金額」とは、「支払われる保険金の額」ではなく「支払われる保険金の最大額」を意味しており、かつ実際に支払われる保険金は、保険金額、あるいは損害時の住宅の再調達価額のいずれか低い金額が上限になります。

反対に、同じ再調達価額2,000万円の住宅について、火災保険金額を1,000万円とした場合、全焼時の保険金は1,000万円となり住宅再建は困難になります。さらに、この契約で住宅が半焼し、1,000万円の損害が生じても、1,000万円は受取れない場合があります。保険金額が再調達価額の5割しかなく保険料負担が少額なのに、適正に契約した契約者と同額の保険金を受取ることはできません。保険料負担に応じて保険金が削減されるので、修繕費用に満たない保険金しか受取れなくなります。(=一部保険)

再調達価額を決めるベースとなる建築費は、需給や物価変動で変化します。建築費に大きな変化があれば、火災保険の契約後であっても再調達価額は変わります。保険金額が契約時のままでは保険金を適正に受取れない可能性もあるため、火災保険金額は随時見直しましょう。

保険金額と再調達価額の関係性

建物の再調達価額が2,000万円の場合に、異なる保険金額による補償の例:一部保険(1,000万円の保険金額):1,000万円は自己負担となる。全部保険(2,000万円の保険金額):建物の評価額と同額の保険が支払われる。超過保険(3,000万円の保険金額):超過分1,000万円は支払われない。
一部保険 全部保険 超過保険
再調達価額との関係性 保険金額 < 再調達価額 保険金額 = 再調達価額 保険金額 > 再調達価額
支払われる保険金 保険料負担に応じて保険金が削減されて支払われる可能性がある 損害額がそのまま保険金として支払われる 損害額以上の保険金は支払われない
  • 免責金額を設定している場合は、保険金額から免責金額を引いた額が支払われます

新築戸建てで負担する火災保険料は?

火災保険料は、都道府県および建物構造などで決定されます。とりわけ構造については、以下のような違いによって被害度が変化するため、個別の条件が重視されます。

など

住宅を維持する限り、火災保険料の負担は続きます。建物構造が火災保険料にどの程度の影響を及ぼすか事前に知っておくと、住宅を新築する際の検討材料にもなるのではないでしょうか。

建物構造によって保険料は異なる

住宅構造別の保険料率は3区分で、保険料が安い順に以下の通りです。

  1. M構造(コンクリート造マンション等)
  2. T構造(コンクリート造戸建て住宅、2×4住宅等一定の木造住宅等)
  3. H構造(M構造・T構造に該当しない木造住宅等)

同じ木造でも、T構造とH構造では保険料に開きがあります。

保険料の安いから高いまでの構造別分類図。M構造はコンクリート造の共同住宅など(コンクリート造建物・コンクリートブロック造建物・レンガ造建物・石造建物または耐火建築物の共同住宅)、T構造はコンクリート造の戸建住宅など(コンクリート造建物・コンクリートブロック造建物・レンガ造建物・石造建物・鉄骨造建物・耐火建築物・準耐火建築物・省令準耐火建物・ツーバイフォー住宅など)、H構造は木造の共同住宅、戸建住宅など(M構造・T構造でない建物)を指し、保険料はM構造が最も安く、H構造が最も高い。

その他の保険料を決める要素

近年は、築年数の浅い住宅の保険料が割引かれる一方、一定の築年数を経た住宅は保険料が高めになります。築年数が浅いほど、損害の発生が少ない実態があるためです。

保険料を決める要素
安くなる要素 高くなる要素
建物構造 マンション 木造住宅
築年数 浅い 経過している
補償額 低い 高い
補償範囲 狭い 広い

また、同じ都道府県の同じ構造・築年数の住宅であれば、延べ床面積が広いほど保険料は高くなります。
保険料は、保険金額に保険料率をかけて算出されますが、住宅が広ければその分再調達価額および保険金額が高くなるため、火災保険料もそれに比例することになります。

新築戸建ての火災保険料を抑える「3つのポイント」

これまで見てきたように、居住地や住宅の状況で火災保険料はある程度決まりますが、保険料を抑える工夫の余地はあります。保険料を抑えるポイントとなるのが、以下の3つです。

1.保険期間を長期にする

火災保険の保険期間は、1年から最長5年までの間で契約者が選択できます。保険料の支払方法が同じであっても、保険期間が長期であるほど保険料は割引かれて安くなります。たとえば、保険期間1年で毎年保険料を支払うのと、保険期間5年で毎年保険料を支払うのでは、毎年の手間や支払回数は変わりません。しかし、保険期間が長いほど割引が適用されるため、保険期間5年のほうが保険料が安くなります。
このように、補償内容を変えなくても、保険期間の選択で保険料を抑えることができます。

2.保険料を一括払にする

火災保険料の支払方法は、大きく以下2つがあります。

  • 保険期間中の保険料を一度に払う「一括払」
  • 保険期間中の保険料を分割して支払う「分割払」

さらに分割払には、年払や月払などがあります。
補償内容や保険期間が変わらなくても、月払よりも年払、年払よりも一括払のほうが火災保険料が安くなります。
このように、補償内容を変えなくても保険料の支払方法の選択で保険料を抑えることができます。

3.優先順位を考えて補償を選ぶ

火災保険には下表のとおり、火災をベースに種々の補償があります。補償の範囲をどこまでにするかで保険料は変わります。

火災保険の補償内容
補償項目 補償内容
偶然な事故 火災 火災による損害
破裂・爆発 気体または蒸気の急激な膨張を伴う破裂などの損害
水濡れ 給排水設備の事故または他の戸室で生じた漏水等による損害
物体の落下・衝突 建物外部からの物体の落下や衝突、接触、倒壊等による損害
騒擾(そうじょう) 騒擾及びこれに類似の集団行動又は労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為による損害
盗難 盗難によって生じた盗取、損傷、汚損による損害
自然災害 落雷 落雷による損害
風災 台風・旋風・竜巻・暴風等による損害
ひょう災 ひょうによる損害
雪災 豪雪の際の雪の重みや落下による事故、雪崩による損害
水災 台風・暴風雨・豪雨などによる洪水や融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによる損害

優先順位をつけて補償を絞れば、保険料を抑えることは可能です。ただし、保険料を優先するあまり、必要な補償まで削るのは避けましょう。また、パッケージ型の火災保険では、パッケージされている補償の必要性が低くても外せない場合があります。

「ハザードマップ」を確認して適切な補償を選択

補償の範囲を考えるうえで特に重視して検討したいのが、自然災害の補償です。ひとたび風水災などが起これば、生活基盤に深刻な損害を及ぼしかねないからです。居住地の「ハザードマップ」を確認して、リスクがあれば、火災保険や地震保険で確実にカバーできるようにしておきましょう。

ハザードマップは、地域に応じて以下の災害を想定して市区町村が作成しています。

  • 洪水
  • 土砂災害
  • 液状化
  • 噴火

など

ハザードマップを確認すれば、これらの災害が起きたとき、自分の居住地でどの程度の被害が生じるのか、地図上で把握することができます。

浸水や土砂災害による被害が予測されているなら、水災補償は欠かせません。また、ハザードマップは更新されることがあるので、その時は火災保険も見直しましょう。

新築戸建てを取得するなら、前倒しで火災保険の検討を

新築戸建て、とりわけ注文住宅などを取得するまでには、さまざまなコストがかかります。火災保険料も欠かせないコストのひとつですが、取得手続の最後の段階で住宅ローン契約などとともに加入を求められることもあり、慌てて加入する人も少なくないかもしれません。しかし火災保険は、生活基盤の喪失を回避するための手段であり、住まいの実情やリスクに応じて適切に加入することが大切です。加入の仕方を工夫すれば、保険料をより抑えることもできます。
新築戸建てを取得するなら、火災保険についても前倒しで検討してみてください。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)