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パソコンの損害は火災保険で補償される?
補償されるケースや注意点について解説

書類を見ている男性とサポート女性のイラスト

火災保険における家財とは、建物内に収容される生活用の持ちものを指します。パソコンは家財に該当するため一定の偶然な事故や自然災害でパソコンが損害を受けた場合には、火災保険による補償を受けられます。ただし、補償範囲は契約内容によって異なるほか、補償の対象外となるケースもあります。パソコンの損害で補償を受けるためには、家財の火災保険に適切に契約しておくとともに、事前に補償内容を確認しておくことが大切です。

パソコンの損害は火災保険で補償される?

建物だけではなく、建物内に収容されている家財も火災保険の補償対象となります。建物と家財の両方の損害に対して補償を受けるには、建物と家財の両方で火災保険に加入する必要があります。

家財とは、建物内に収容されている生活用の持ちものを指します。建物内の多くのものは家財に該当しますが、貴金属や骨董(こっとう)品のように、家財に該当はするものの契約時に申告が必要なものや、自動車など生活用の持ちものあっても、家財として認められないものがあります。

火災保険の対象となる「家財」に該当するもの、しないもの
該当するもの

建物内に収容されている本人や家族の「生活用の持ちもの」

  • 洗濯機や冷蔵庫・テレビなどの電化製品・クローゼットやベッド・ダイニングセットなどの家具・家族の衣服・キッチン電化製品や調理器具
  • 家具・食器・楽器・パソコンや書籍・自転車・原動機付自転車 その他
  • 生活用品など
該当するが、申告が
必要な場合があるもの

生活上必要となるものではない「ぜいたく品」

貴金属・宝石、書画・骨董(こっとう)品、その他美術品など
(1個または1組の価額が30万円を超えるものを指すことが多い)
該当しないもの 自動車(自動三輪車・自動二輪車含む)、
動植物、通貨、有価証券、預貯金証書(通帳・カード含む)、
印紙、切手類、プログラム・データ

電子機器ではパソコンのほか、タブレット、スマートフォン等も家財に該当します。これらは貴金属や骨董(こっとう)品など「ぜいたく品」には該当しないため、30万円を超えていても契約時の申告は不要です。

家財を対象とする火災保険に加入していれば、補償対象となる一定の偶然な事故や風水災などの自然災害でパソコンが損害を受けたとき、火災保険による補償を受けられます。

火災保険で補償される事故や自然災害

火災保険では、パソコンを含む家財が一定の偶然な事故や風水災などの自然災害が原因で損害を受けたとき、補償を受けられます。具体的には以下のような一定の偶然な事故や自然災害が対象になります。

火災保険の補償内容
補償項目 補償内容
偶然な事故 火災 火災による損害
破裂・爆発 気体または蒸気の急激な膨張を伴う破裂などの損害
水濡れ 給排水設備の事故または他の戸室で生じた漏水等による損害
物体の落下・衝突 建物外部からの物体の落下や衝突、接触、倒壊等による損害
騒擾(そうじょう) 騒擾およびこれに類似の集団行動又は労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為による損害
盗難 盗難によって生じた盗取、損傷、汚損による損害
破損・汚損 不測かつ突発的な事故による破損・汚損
自然災害 落雷 落雷による損害
風災 台風・旋風・竜巻・暴風等による損害
雹(ひょう)災 雹(ひょう)による損害
雪災 豪雪の際の雪の重みや落下による事故、雪崩による損害
水災 台風・暴風雨・豪雨などによる洪水や融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによる損害

火災保険でパソコンの損害が補償される事例

以下のようなケースでは、それぞれに該当する補償が適用されます。

なお、地震が原因で生じた損害は火災保険では補償されません。地震が原因で家財に損害が生じた際は、家財を保険の対象として地震保険に加入している場合、家財全体の損害に応じて一定額の補償を受けることが可能です。ただし、地震保険では火災保険のようにパソコンの修理費に基づいて保険金が支払われません。

また、事故が発生した日の翌日から3年以内に保険金を請求しないと、法律上時効となります。時間が経ってしまうと、修理見積や写真といった損害の証拠をそろえるのも難しくなることも考えられます。損害が生じたら、速やかに損保会社に連絡して請求手続を進めましょう。

あるいは、量販店で保証サービスに加入している場合、ケースにより補償の対象になることも考えられます。問合せをしてみましょう。

保険金が支払われない主な場合

他方で、火災保険で補償されないケースもあります。パソコンに生じた損害に限らず補償されないのは以下のようなケースです。

パソコンの経年劣化による消耗や故障、機器の欠陥は偶然な事故とは無関係に発生するため、火災保険では補償の対象外です。

また、免責金額も留意が必要です。免責金額とは保険金請求時に自己負担する金額であり、1万円、5万円、10万円など契約時に設定します。免責金額が高いほど保険料は抑えられますが、その分、請求時に受取れる保険金の額は減少します。また、損害額が免責金額以下の場合、保険金は請求できないことにも留意しておきましょう。

ほかにも、パソコンで生じがちな以下のようなケースが補償対象外になるので知っておきましょう。

データやソフトウェアは家財に含まれず補償対象外

パソコンそのものは家財に含まれ火災保険の補償対象ですが、パソコン内のプログラムやデータ、ソフトウェアは家財に含まれていません。そのため、これらが損害を受けたときの復旧費用等は火災保険では補償されません。
データ損失に備え、日頃からバックアップを取ることや、クラウドストレージを活用するなどの対策をしておくことが重要です。

「破損・汚損」補償の注意点

火災保険には不測かつ突発的な事故による損害を対象にする「破損・汚損」という補償があります。たとえば、模様替えで家具を移動しているときにパソコンにぶつかり破損した、というケースで補償を受けられます。ただ、どのような破損損害でもカバーできるというわけではないので、注意が必要です。

損害額が免責金額を超えていなければ保険金は請求できませんし、超えた場合でも免責金額を差し引いた額が保険金となるため、そもそも修理費そのものはカバーできないことを知っておく必要があります。

また、不測かつ突発的な事故に直接起因しない電気的事故や機械的事故で生じたパソコンの損害も補償の対象になりません。加えて、パソコンの周辺機器に生じた損害や電球、ブラウン管等の管球類のみに生じた損害も補償の対象外です。

前述の通り、ノートパソコンやスマホ等の携帯式電子機器およびそれらの付属品は火災保険の家財に該当します。よって一定の偶然な事故や自然災害が原因で生じた損害は火災保険の補償対象となりますが、「破損・汚損」では別です。

ノートパソコンやスマホ等の損害は「破損・汚損」では補償対象外になります。前述の模様替えの例では、パソコンの損害は補償対象になりますが、同じ事故でも、ノートパソコンやスマホ等が損害を受けた場合は補償されないということになります。

いざというときに備えて補償内容を見直そう

破損するとかなりの不便を強いられるほど、もはやパソコンは私たちの暮らしになくてはならないものになっています。失われたパソコンを再調達するにはまとまったお金が必要になりますが、一定の事態で発生した損害であれば、火災保険で復旧を図ることが可能です。平時から補償内容を確認しておいて、いざというときしっかり火災保険を役立てましょう。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)