中古住宅の火災保険金額と保険料の目安について解説
- この記事は、一般的な火災保険商品について説明しております。ソニー損保の新ネット火災保険の詳細はこちらからご確認ください。
「中古住宅には大した保険金額が設定できないのでは」と耳にすることがあります。しかし、損害が生じた住宅の原状回復を図る火災保険の役割は、中古住宅であっても新築住宅と変わりません。ここでは、中古住宅の火災保険金額と負担する保険料の水準について解説します。
新築・中古住宅の火災保険金額は?
建物を対象にして火災保険に加入するときに設定する保険金額は、住宅再建に必要となる現時点の金額(=「再調達価額」または「再取得価額」)とするのが一般的です。再調達価額で設定すれば、損害が生じた住宅を保険金で再建することが可能です。
住宅は時間の経過とともに古くなります。不動産取引上の住宅価格は、一般に「20年経過後は評価ゼロ」などとも言われます。そのため、新築住宅と違い、中古住宅には十分な保険金額を設定できないのではと懸念を持つ人もいるようです。
しかし、火災保険ではこうした考え方をしません。一般に、新築住宅あるいは中古住宅であっても、同規模・同程度の住宅を現時点で再建するのに必要な再調達価額で火災保険金額を設定します。
住宅の建築年月別で保険金額を比較
建築年月 | 新築時の建物代金 | 2024年10月時点の保険金額 (再調達価額で設定=再建に必要な現在の金額) |
---|---|---|
1984年1月 | 2,000万円 | 3,020万円 |
2004年1月 | 2,000万円 | 2,580万円 |
2024年1月 | 2,000万円 | 2,000万円 |
- 【算出条件】
- 一戸建て(木造・H構造)、東京都、保険始期日:2024年10月1日
- 年次別指数法により保険金額を算出。再調達価額=保険金額とした場合。
1984年、2004年、2024年に建てた住宅で比べてみます。
住宅を新築したときの建物代金はいずれも2,000万円とします。これらの住宅を再建するのに必要な2024年10月時点の再調達価額は、2024年に新築した住宅であれば2,000万円と同額ですが、1984年、2004年の住宅はいずれも新築時より高くなります。1984年当時に2,000万円で建てられた住宅と同規模・同程度の住宅は、2,000万円では再建できず、現在は3,020万円必要になります。これは、物価や建築費の相場が変動するためで、「新築時の建物代金」を「現在再建する場合に必要な金額」に直して保険金額が算出(年次別指数法)されているからです。
このように、物価上昇や需要拡大などに伴い、将来の建築費が上昇することも考えられます。建築費が上昇する局面では、保険金額の見直しが必要になるということです。新築したときの保険金額2,000万円のままでは、住宅を再建する費用が不足するおそれもあります。
「時価」で設定した保険金額は見直しのタイミング
再調達価額に対し、かつては「時価」で保険金額を設定するケースもありました。時価とは、老朽化を加味した現状相当の金額であり、新築時から時間が経過するほど再調達価額をより下回る金額になります。築年数が古くても適切に維持されている住宅であれば、火災保険上の時価が再調達価額の5割をわる可能性は少ないものの、保険金が再調達価額の5割では住宅再建は困難です。そのため近年は、保険金額を再調達価額で設定し、損害が生じたときに住宅再建や修繕に足る十分な保険金を受取れるようにすることが主流になっています。
建築年月により異なる火災保険料の目安
建築年月 | 建物の保険金額 | 保険料(保険期間5年/年払) |
---|---|---|
1984年1月(築40年) | 2,000万円 | 35,117円 |
2004年1月(築20年) | 2,000万円 | 29,182円 |
2024年1月(築0年) | 2,000万円 | 14,818円 |
- 【算出条件】
- 一戸建て(木造・H構造)、東京都、水災リスク区分:2、保険期間:5年、保険始期日:2024年10月1日、免責金額なし
- 【保険金額】
- 建物:2,000万円(家財なし)
- 【補償】
- 火災等、風災等、水災、水濡れ等、盗難(特約の付帯なし)
- 基本補償の免責金額について「なし」、「3万円」をお選びいただいた場合の「水濡れ、外部からの物体の衝突など」の免責金額は「5万円」となります。
保険料は、新築住宅よりも中古住宅のほうが高くなります。火災保険には築年数が浅い住宅に対する割引制度や築年数に応じた保険料率を適用する仕組みがあり、築年数が保険料に影響を及ぼすからです。ただし、割引制度や保険料率は各損害保険会社で異なります。
上表は、建築年月が異なる住宅の保険料を試算したものです(ソニー損保の新ネット火災保険の場合)。建物の保険金額はすべて2,000万円と同額ですが、負担する保険料は築年数により変わることが分かります。
こうした保険料の差は、住宅のリスクの差にほかなりません。築年数の浅い住宅に比べ、築年数の古い住宅は電気設備や給排水設備などが老朽化しています。火災や水漏れ、大雪などでの損壊リスクが総じて高く、今後の保険金の支払いが多くなることが見込まれます。業界団体である損害保険料率算出機構によれば、住宅全体に占める築年数を経た住宅の割合が近年増加しており、その傾向は今後も続くとみられています。
中古住宅において火災保険に加入しないリスク
保険料は、その住宅が抱えるリスクに応じて設定されるのが基本です。中古住宅の保険料が新築住宅より高くなるのは、住宅に損害が生じるリスクがより高いということであり、中古住宅こそ火災保険も含めた十全な備えが必要ということでしょう。
住宅を購入する際、住宅ローン契約時あるいは売買契約時に火災保険の契約を求められるのが一般的です。そのときは、慌てて火災保険に加入するのではなく、契約前に複数社で見積りをし、検討することをおすすめします。
というのも、築年数による加入基準が損害保険会社で異なるからです。加入できる条件を築50年以下の住宅、築20年以下の住宅、あるいは1981年以降建築の住宅のみとするケースもあります。中古住宅でも加入できる保険を事前に絞り込んで複数社で見積りをして検討すれば、より自分に合った火災保険に加入できるでしょう。
火災保険の必要性については、以下のページでも解説しています。火災保険の必要性は?加入すべきか改めて解説
住宅のメンテナンスが大切
適切な火災保険への加入とともに大切なのが、購入後の住宅の定期的なメンテナンスです。損害調査の専門家によれば、ある建売住宅団地に台風が到来したとき、同時期・同水準で建てられた住宅であるにもかかわらず、被害を受けた住宅と受けていない住宅があったと言います。その分かれ道は、購入後の住宅メンテナンスが行われているかどうかでした。
気候変動の影響で、風水災が近年激甚化していると言われています。中古住宅こそ、風災や雪災、水災などの被害を可能な限り抑えるためのメンテナンス、そして、それでも防ぐことができなかった損害をカバーするために火災保険で備えることが、安心できる暮らしに繋がります。
火災保険料を抑えるポイント
負担する保険料は気になるところです。保険料の水準は、建物の所在地や構造、築年数など建物の状況である程度決まるため、負担する保険料の水準を大きく変えることは難しいものの、契約者の選択により保険料を抑えることはある程度可能です。
ポイントとして以下があげられます。
- 保険料の支払方法(一括払<分割払(月払・年払))
- 保険期間(2年以上の長期契約<1年契約)
- 補償と特約の選択(必要性で絞り込む<可能な限り手厚く)
同じ補償内容であっても、保険料の支払方法を月払や年払の分割払より一括払に、かつ保険期間1年で更新を続けるよりも2年以上の長期契約にすることで、トータルの保険料は抑えられます。
居住地のハザードマップを踏まえ、自宅の災害リスクに適した過不足のない補償内容にしながらも、他の保険に付帯した特約との重複を避けたりすることで、保険料負担を抑えることもできます。割引条件などが異なるいくつかの火災保険で見積りをし、比較検討してみましょう。
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