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地震保険の耐震等級割引とは?確認書類や割引条件などを解説

電卓、財布、書類のイラスト

住宅の耐震性レベルを示す基準として、公的制度である住宅性能表示制度の「耐震等級」があります。耐震等級を取得した住宅は、地震保険料に最大50%の割引が適用され、保険料負担が軽減できます。ここでは、耐震等級の概要、地震保険料割引が適用される条件などを解説します。

耐震等級とは

建物に求められる耐震性能のレベルは「建築基準法」で定められています。建築物の構造安全規定の強化を図るため1950年に制定された法律で、国民の生命や健康および財産を守るために必要な最低限の水準を定めています。
制定後も、震災を機に種々の改正が行われてきました。1978年の宮城県沖地震を教訓に1981年に大幅に改正され、建物が地震に耐え得る基準をより高めた「新耐震基準(=新耐震)」と呼ばれる新しい耐震基準が導入されました。よって、1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物は、それまでの耐震基準よりも、高い基準をクリアした新耐震基準で建てています。ただし、それは生命を守れる最低限の水準であり、建物が地震で壊れないことを保証するものではありません。

住宅の品質確保の促進等に関する法律

最低限の基準を定めた建築基準法に対し、住宅の安全性をより追求、消費者が良質な住宅を安心して取得できるよう2000年に施行されたのが「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」です。

法律のポイントは以下の通りです。

  • 新築住宅では、基本構造部分について「瑕疵(=欠陥)担保責任期間を10年間義務化」
  • さまざまな住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」
  • 住宅に関わるトラブルを迅速に解決する「住宅専門の紛争処理体制」の整備

このうちの住宅性能表示制度は、新築・既存(中古)住宅含め、質の高い住宅を比較・選択しやすくする基準を示したもの。第三者機関である評価機関が性能を評価し、発行される住宅性能評価書には、それぞれに該当する以下のマークが付されます。

新築住宅

設計 性能評価マーク

設計住宅性能評価用の
評価書に付すべきマーク

建設 性能評価マーク

建設住宅性能評価(新築住宅)用
の評価書に付すべきマーク

既存住宅

既存住宅 性能評価マーク

建設住宅性能評価(既存住宅)用
の評価書に付すべきマーク

  • 既存住宅については設計を行うものではないので、設計住宅性能評価書はありません。

住宅性能表示の対象となるのは、構造耐力、省エネルギー性、遮音性など以下のような10分野に区分され、第三者機関により公正に性能が評価されます。

@ 構造の安定/A火災時の安全/B劣化の軽減/C維持管理・更新への配慮/D温熱環境/E空気環境/F光・視環境/G音環境(新築住宅のみ)/H高齢者等への配慮/I防犯

これらには表示の適正化を図る共通ルールが設けられ、等級を用いて住宅性能をわかりやすく表示し、消費者が比較できるようにしています。このうち、地震などに対する強さを示すのが「構造の安定」の項目です。

耐震等級は3区分

耐震等級
等級 具体的な性能
等級3 極めてまれに(数百年に1回程度)発生する地震による力の1.5倍の力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度
等級2 極めてまれに(数百年に1回程度)発生する地震による力の1.25倍の力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度
等級1 極めてまれに(数百年に1回程度)発生する地震による力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度
⇒建築基準法がすべての建物に求めている最低基準

耐震等級は1・2・3で区分され、数字が上がるほど住宅の耐震性が高いことを示します。それぞれの等級に求められる性能は上図の通りです。

耐震性が高く、壊れにくい建物は、言うまでもなく地震による被害がより抑えられると考えられます。実際、熊本地震における震源地付近の被害調査の結果では、耐震等級3の木造住宅に大きな損傷は見られず、大部分に被害がなかったことも分かっています(※)

耐震等級に応じた地震保険料の割引

住宅性能表示制度が活用された住宅はさらに、以下のようなメリットが享受できる場合があります。

地震保険の割引制度は、一定以上の耐震性能を持つ建物に適用される仕組みです。住宅性能表示制度を利用した住宅を対象とする耐震等級割引のほか、免震建築物割引、耐震診断割引、建築年割引があり、耐震性能に応じた割引率が設定されています。複数の割引に該当する場合は重複適用されず、最も割引率の高い割引がひとつ適用されます。

詳細は下表の通り。耐震等級割引では住宅性能表示制度の耐震等級別に、10%、30%、50%と3段階の割引が適用されます。

地震保険の割引制度
割引の種類 割引率 割引の適用条件
免震建築物割引 50% 住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」)に基づく免震建築物である場合
耐震等級割引 耐震等級3:50%
耐震等級2:30%
耐震等級1:10%
  • 品確法に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を有している場合
  • 国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震等級を有している場合
耐震診断割引 10% 地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たしている場合
建築年割引 10% 昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合

さらに、耐震等級割引の地震保険料について具体的に見てみましょう。東京都にある一戸建てで試算してみると、耐震性能に応じた割引率および地震保険料は以下のようになります。

耐震性能に応じた割引率および地震保険料
構造 建築年月 耐震性能 割引制度 保険料
木造 1981年1月築 なし 適用なし 144,900円
2022年1月築 耐震等級1 耐震等級割引10% 130,430円
鉄筋コンクリート造 2022年1月築 耐震等級2 耐震等級割引30% 67,880円
2022年1月築 耐震等級3 耐震等級割引50% 48,450円
【算出条件】
一戸建て、東京都、保険期間5年、一括払、保険始期日2022年10月1日
【地震保険金額】
750万円(建物の火災保険金額:1,500万円)

耐震性能の違いで最大50%の割引となるのですから、保険料負担は、長い目で見るとそれなりの差となります。より安全性の高い住宅は、生命や財産をより守れるだけでなく、保険料負担も抑えられるわけです。

地震保険の耐震等級割引に必要な確認書類

地震保険料の割引制度の適用を受けるには、所定の確認書類を提出することが必要です。
住宅の耐震等級は、住宅性能評価書に記載されています。よって、耐震等級割引を受ける場合、住宅性能評価書を確認書として提出します。あるいは、下表に記載した書類を確認書類とすることもできます。

耐震等級割引を受ける際の確認書類

  • 品確法に基づく「建設住宅性能評価書」または「設計住宅性能評価書」
  • 評価指針に基づく「耐震性能評価書」
  • (独)住宅金融支援機構基準に適合する「適合証明書」または「現金取得者向け新築対象住宅証明書」
  • 長期優良住宅の認定申請の際の「技術的審査適合証」または「長期使用構造等である旨の確認書」
  • 住宅取得等資金に関わる贈与税の非課税措置を受ける際の「住宅性能証明書」
  • 長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく「認定通知書」および耐震等級等を確認できる「設計内容説明書」
  • 上記以外の書類で登録住宅性能評価機関が作成した書類のうち対象建物の耐震等級を証明する書類

注意が必要なのは、住宅の耐震性が実態として耐震等級を満たす場合であっても、確認書類を提出しなければ割引が適用されない点です。

「耐震等級3相当」等のメーカー独自基準に注意

住宅性能表示制度は任意の制度ですから、申請をする、しないは個人の判断にゆだねられています。住宅性能評価を受けるには費用が必要ですが、将来にわたる地震保険料割引のメリットを踏まえたうえで申請を検討したいところです。

また、耐震割引制度の対象となるのは、住宅性能表示制度による耐震等級を満たした場合のみです。住宅メーカー独自の耐震基準を設けている場合がありますが、こちらは割引対象になりません。

耐震性が高い住宅にも地震保険は必要?

耐震等級がより高い住宅であれば、前述の通り、地震の揺れに対する耐力もより高くなります。大きな地震が起きても被害を受けない可能性が高ければ、「地震保険は不要では?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、地震による損害は、揺れで起こるケースばかりではありません。耐震等級が高い住宅であっても、立地により地盤の液状化や土砂崩れ、津波や噴火による被害を受けることがありますし、住宅が密集している地域では、地震による大規模火災が起きるおそれもあります。火災が起きるのは自宅とは限らず、近隣で起きた火災で自宅が延焼被害を受けることも考えられます。
地震により起きた火災は、通常の火災と比べ、より深刻な事態となることも考えられます。道路の寸断や障害物、通信網の混乱により、消防車が到着できないおそれが高くなるからです。通常の火災とは異なるこうした事態を、火災保険で補償するのはリスクが高く、地震による火災は地震保険で補償されることになるのです。

こうした実情を踏まえると、耐震性が高い住宅ならば地震保険の必要性が低いとは言えません。持ち家世帯で住宅ローン残債があり、かつ貯蓄が少ない場合には、地震による被災後の住宅再建がより困難になるおそれがあります。ともあれ、耐震性が高い住宅であれば、地震保険料負担はより抑えられます。居住地の災害リスクを踏まえ、万が一の事態にも思いをめぐらせたうえで、慎重に判断しましょう。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)