メインコンテンツへ移動

地震保険の補償内容は?
地震保険金の支払例や支払基準も解説

家のイラストとチェックリストが描かれたクリップボードを持つ手があり、チェックを入れている様子。左側に円グラフ、後ろにバーグラフも描かれている

地震や噴火、これらによる津波(以下「地震等」)が原因の火災・損壊・埋没・流失で受けた建物や家財の損害を補償するのが地震保険です。地震は場所を問わず発生し、かつ生活基盤に大きな被害を与えるおそれのある災害です。地震保険に加入しておけば、建物や家財に損害が生じたときに保険金を受取ることができ、その後の生活再建が支えられます。
ただし、地震保険には他の保険と異なる特徴があり、保険金の支払われ方にも独特のルールがあります。保険金を受取るとき「そんなはずでは」とならないよう、地震保険についてしっかり理解しておきましょう。

地震保険とは

地震等が原因で生じた建物や家財の損害は、地震保険でないと補償されません。地震保険では、地震等が原因で生じた火災や土砂崩れ・山崩れ、地盤液状化などによるさまざまな損害が補償されます。

地震はいつ、どこで、どの規模で起きるかが未だ解明されていません。予測を超える被害が広域にわたり生じるおそれもあります。災害による損害が巨額となるおそれもあることから、地震保険は法律に基づき官民一体で運営されています。火災保険とは加入ルールが異なり、保険金の支払われ方も独自の方法で行われます。

地震保険の対象は「建物」と「家財」

地震保険に入れるのは
建物 家財
対象になる 居住用の建物 生活用動産
× 対象にならない 事業用物件や工場など、人が生活するための住まいとして使用されない建物。 1個または1組の価額が30万円を超える貴金属や骨とう品など。通貨や有価証券、自動車も対象外。

地震保険の対象になるのは、暮らしに関わる以下のものに限られています。

その理由は、地震で被災した人の生活再建を支えるのが地震保険の目的だからです。そのため、事業用物件や工場など、人が生活するための住まいとして使用されない建物は地震保険の対象になりません。建物の一部が住まいとなっている店舗併用住宅も対象になりますが、併用住宅内に収容される業務用の設備・什器(じゅうき)や商品・製品等は対象外です。

家財についても同様です。暮らしに必要なものについては、食器類、家具類、電気器具類、衣類や寝具、身の回り品など幅広く対象になりますが、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属や骨とう品などは対象外です。また、通貨や有価証券、自動車も家財には含まれません。なお、地震で受けた自動車の損害は、自動車保険の地震被害をカバーする特約(※)で補償を受けられる場合があります。

ソニー損保より補足説明
  • ソニー損保の自動車保険では、この特約を販売していません。

地震保険金は支払われる?支払われない?支払い例を解説

地震保険で補償されるか支払われるケース、支払われないケースを具体的に見てみましょう。

地震保険金が支払われる?支払われない?

〇:支払われる ×:支払われない △:場合による

ケース 支払い有無 解説
地震の揺れで住宅の壁にひびが入った 主要構造部の3%以上の損害であれば補償される
地震による火災で住宅が全焼した 地震等が原因で生じた火災は火災保険では補償されず、地震保険で補償される
噴火による溶岩で住宅が滅失した 噴火による損害は補償対象
津波で住宅が流された 津波による損害は補償対象
地震による地盤液状化で住宅が傾いた 一定以上の傾き、沈下があれば補償される
地震発生から11日目に住宅が倒壊した × 地震発生から10日経過後の損害は補償対象外
地震による山崩れで住宅が倒壊した 地震が原因の山崩れ等も補償対象
地震の揺れで門と塀が倒れた(住宅に被害なし) × 住宅の主要構造部に損害がない場合は補償対象外
津波で自家用車が流失した × 自動車は家財に含まれず補償対象外
避難所にいる間に留守宅から家財が盗まれた × いわゆる火事場泥棒は補償対象外

地震保険金が支払われるケース

地震保険金が支払われるケースは、以下をポイントとして考えるとわかりやすいでしょう。

  • 地震等が原因で起きた補償対象の損害
  • 一定以上の損害

損害保険は「原因が何か」で適用される補償が変わります。火災といっても、地震等が原因で起きた場合は火災保険では補償されません。地震等が原因で発生した火災、噴火した溶岩による被害、津波による床上浸水、地盤液状化、山崩れなどによる建物や家財の損害は、地震保険で補償されます。

また、建物については主要構造部の3%以上、家財については家財全体の10%以上の損害が生じたときに補償を受けられます。

地震保険金が支払われないケース

以下のような損害では、地震保険金が支払われません。

  • 地震以外の原因で起きた損害
  • 建物では主要構造部の3%未満、家財では家財全体の10%未満の損害
  • 門や塀、窓ガラスなど建物の主要構造部以外の部分のみの損害
  • 貴金属や骨董品など1個または1組の価額が30万円を超えるものの損害(※)

など

なお、集中豪雨等が原因で起きた山崩れや床上浸水による損害は、地震保険ではなく火災保険の水災で補償されます。

ソニー損保より補足説明
  • ソニー損保の新ネット火災保険では、絵画、骨董品、貴金属等の損害の額が1個または1組について30万円を超える場合、損害の額を30万円とみなします。

地震保険で支払われる保険金は「火災保険金額の50%」が上限

地震保険金額の範囲
建物 家財
保険金額の範囲 火災保険金額の30%〜50%
(5,000万円が上限)
火災保険金額の30%〜50%
(1,000万円が上限)

地震保険は、火災保険とセットで加入します。地震保険金額は、以下の範囲内に設定するのがルールです。

火災保険金額の30%〜50%の範囲内
かつ建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限

たとえば、建物の火災保険金額が3,000万円であれば、地震保険金額は900万円〜1,500万円の間で設定できます。家財の火災保険金額が1,000万円であれば、300万円〜500万円で設定できます。

火災保険は、3,000万円の価額の住宅であれば、3,000万円の保険金額を設定できるので、失った住宅を再建可能な保険金を受取ることができます。しかし、地震保険はその50%が上限となるため、地震保険金だけで住宅の再建は困難です。

地震保険金に上限がある理由

地震の発生や規模の予測はいまだ困難であり、巨大地震で被害が広域に及べば、相当額の地震保険金の支払いが発生するおそれがあります。その場合でも、保険金は被災者に広く支払われなくてはなりません。保険金の支払いに支障をきたさない範囲内での引受とし、契約1件当たりの保険金額に上限を設けることで、損害保険会社(以下「損保会社」)や政府から円滑に保険金が支払われる仕組みになっているのです。

被災すると多くのものが失われるおそれがあります。たとえ50%が上限であっても、まとまったお金を受取れる手段となる地震保険は、被災後の生活再建の支えになり得ます。

なお、一部の損保会社は、地震保険金とあわせ火災保険金額の最大100%の保険金を受取れる火災保険の特約を提供しています。

ソニー損保より補足説明
  • ソニー損保でも、「地震上乗せ特約(全半損時のみ)」を付帯することで、地震による損害を最大100%カバーすることができます。

地震保険金の計算方法

地震保険金は、損害の程度に応じた4つの損害区分で支払われます。修理費用等が保険金として支払われる一般的な火災保険とは、この点でも異なります。

地震保険金が4つの損害区分で支払われる理由は、大地震が発生した場合でも被災者が早期に生活再建を図れるよう、短期間に大量の損害調査を行い、迅速かつ公正な保険金の支払いが求められているからです。
火災保険では、調査員による損害調査が詳細に行われることもあり、保険金支払いまでにある程度の時間がかかることがあります。地震保険では、地震等による被害が広域にわたり、相当数の世帯に損害が発生することもあり、被災世帯すべてに詳細な損害調査を行っていると、保険金の支払いが遅れてしまうおそれがあります。そのため、損害を4つの区分のいずれかにあてはめ、保険金がより迅速に支払われる仕組みにしているのです。

損害区分は損害の大きい順に4つで、それぞれに対する保険金は以下の通りです。

建物の地震保険金の支払基準

地震保険では、被害を及ぼした原因別に損害認定基準が定められ、損害の程度に応じた該当区分が判定されて保険金が決まります。たとえば、住宅に損害が生じたときに「全損」と認定される基準は、以下のように定められています。

  • 揺れ:建物の基礎や柱、壁や屋根などを指す主要構造部の損害が、建物の時価の50%以上となったとき
  • 火災・土砂災害:建物の延べ床面積の70%以上が焼失または流失したとき
  • 津波:100cm以上の床上浸水を被った場合または地盤面から145cm以上の浸水を被ったとき(木造建物、共同住宅を除く鉄骨造建物で平屋建ての場合)
  • 地盤液状化:建物に30pを超える沈下や一定以上の傾斜などが生じたとき(木造建物、共同住宅を除く鉄骨造建物の場合)
地震保険の建物の4つの損害区分
損害の程度 主要構造部(※1)の損害割合 焼失または流失した床面積 支払われる保険金
全損 建物の時価の
50%以上
建物の延床面積の
70%以上
地震保険金額の100%
(時価額が限度)
大半損 建物の時価の
40%以上〜50%未満
建物の延床面積の
50%以上〜70%未満
地震保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
小半損 建物の時価の
20%以上〜40%未満
建物の延床面積の
20%以上〜50%未満
地震保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
一部損(※2) 建物の時価の
3%以上〜20%未満
地震保険金額の5%
(時価額の5%が限度)
  • 基礎、柱、壁、屋根等をいいます。
  • 「全損」「大半損」「小半損」に至らない建物が床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水を受けて損害が生じた場合に「一部損」に区分されます。

上表にも記載がありますが、火災保険や地震保険では「再調達価額」「時価額」という言葉が登場します。説明しておきましょう。

再調達価額とは

火災保険は住宅を建直せる保険金額、すなわち再調達価額で契約するのが一般的です。3,000万円の新築住宅に再調達価額である3,000万円の火災保険金額を設定すると、火災による全損時に3,000万円の保険金が支払われ、住宅を再建できます。

時価額とは

地震保険で支払われる保険金には、「時価額」との記載があり、これが地震保険への誤解や混乱をよぶことがあります。
時価とは、一般に老朽化を加味した現状相当の金額を指します。時間の経過とともにその価値が減少することを反映した価額のことで、不動産取引上の住宅価格はしばしば「20年経過で価格ゼロ」などといわれます。ただし、火災保険および地震保険上の時価はそれを意味しません。

火災保険では、適切な管理状態下の居住実態がある住宅なら、築年数が古くても同レベルの新築住宅価額の50%を時価の下限とするのが一般的です。不動産取引と異なり、古い住宅でも時価は50%未満になりません。現時点で新築価額3,000万円の住宅と同じ部材で建てられた同規模・同水準の中古住宅の時価は、火災保険上は最低でも1,500万円の時価を保持していることになります。

他方、地震保険金額は、火災保険金額の50%を上限に設定します。上記例で見れば、火災保険金額3,000万円の住宅に1,500万円を上限とした地震保険金額を設定できます。つまり、古い建物であっても、時価100%の1,500万円まで地震保険に加入でき、全損の場合には時価額を上限として保険金が支払われるわけです。これが「時価額が限度」の意味ですから、契約した地震保険金額ベースで保険金が支払われるもの、と考えて差し支えありません。算出した保険金の額をさらに時価に修正して支払われる、ということではないのです。

家財の地震保険金の支払基準

地震保険の家財の4つの損害区分
損害の程度 家財の損害割合 支払われる保険金
全損 家財の時価額の
80%以上
地震保険金額の100%
(時価額が限度)
大半損 家財の時価額の
60%以上〜80%未満
地震保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
小半損 家財の時価額の
30%以上〜60%未満
地震保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
一部損(※2) 家財の時価額の
10%以上〜30%未満
地震保険金額の5%
(時価額の5%が限度)

家財も建物と同様、損害の程度に応じた4つの損害区分が判定され、保険金が決定されます。損害額が家財全体の時価額の10%以上になったときに保険金の支払対象となります。
家財の損害認定は、火災保険のように個々の家財の損害に応じて修理費用が支払われる仕組みでないことを理解しましょう。地震保険では家財を5つに分類、その中で一般に所有される品目の損害状況から家財全体の損害割合が決まります。
たとえば、液晶テレビのみの損害で、その損害額が家財の時価額の10%未満であった場合、一部損の基準に及ばないため保険金は支払われません。

家財の5つの分類の明細は以下の通りです。

地震保険の家財の5つの分類
家財の分類 明細
@食器類 食器・調理器具 など
A電気器具類 電子レンジ・テレビ・DVDレコーダー・エアコン・洗濯機 など
B家具類 食器戸棚・タンス・本棚・ベッド・ダイニングセット など
C身の回り品・その他 カメラ・眼鏡類・電話・靴・スポーツレジャー用品 など
D寝具・衣類 寝具・衣類 など

可能な限り速やかに損保会社に連絡を

地震で被害を受けたら、可能な限り、片付ける前に損害状況を写真におさめておきましょう。損害の証拠保全を行っておけば、スムーズな保険金請求につながるからです。損害状況がしっかり確認できるように、建物の全景を4方向から撮影、あわせて損害部分を近景、遠景、家財の損害状況についても複数枚撮影しておきます。

被災後、地震保険金の請求サポートを行う勧誘業者の訪問や連絡を受けたときはご注意を。手数料として保険金の何割かを請求するといった悪質業者とのトラブルが後を絶たないため、関わらないのが賢明です。損害が生じたら、まずは損保会社に連絡を。安全・確実に請求手続を進めましょう。

地震保険の補償内容に関するよくある質問

火災保険では地震による火災は補償されない?

地震が原因で起きた火災で建物や家財が損害を受けても、火災保険では補償されません(※)

近隣の住宅からの延焼被害であっても同様に、補償は受けられません。地震が原因の火災で受けた損害は、地震保険で補償されます。

大地震が発生すると、建物や電信柱が倒壊するなどして通常よりも多くの火災が発生するおそれがあります。さらに、道路の寸断や車両渋滞が起こるなどして消防車が通常備えている消防力が著しく低下すると、通常の火災よりも延焼被害がより拡大するおそれもあります。こうした災害まで火災保険でカバーすることは難しいため、火災保険では補償対象外となるのです。

  • 損保会社によっては、地震等を原因とする火災によって損害を受けた場合、それによって臨時に生ずる費用に対して、火災保険にセットされている地震火災費用で保険金が支払われる場合があります。
地震保険で現金は補償されますか?

地震が原因で現金が焼失・流失するなどして損害を受けても、補償は受けられません。

地震保険では補償対象外だからです。現金のほかにも、有価証券や通帳類、自動車、あるいは貴金属、書画・骨董品などの美術品で30万円を超えるものなどは対象外です。
また、いわゆる火事場泥棒、すなわち地震で避難した後の留守宅が窃盗で被害を受けた場合も、補償されません。

執筆者清水香1968年東京生まれ。CFP 登録商標 認定者。FP1級技能士。社会福祉士。消費生活相談員資格。自由が丘産能短期大学兼任教員。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。2002年、(株)生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか、執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、TV出演も多数。公式ウェブサイト(外部サイト)