火災保険は年末調整や確定申告で所得控除を受けられる?

生命保険などの保険料は、年末調整や確定申告をすることで一定の金額の所得控除を受けられます。では、火災保険や地震保険の保険料は所得控除の対象になるのでしょうか。
結論としては、火災保険は年末調整における所得控除の対象とはなりません。しかし、地震保険については、一定の条件を満たす場合に所得控除を受けることができます。
控除の仕組みを正しく理解してスムーズに手続きを進めていただくために、ここでは、年末調整・確定申告と所得控除の基本的な仕組みや地震保険料控除の金額、申請方法などについてわかりやすく解説します。
年末調整・確定申告と所得控除の仕組み
まずは、前提となる年末調整・確定申告と所得控除の仕組みについて解説します。
年末調整とは?
年末調整とは、1年間の所得税を精算する手続きのことです。会社員の場合、毎月の給与から所得税が天引きされていますが、これはあくまで概算です。その年最後の給与の支払いを受ける際に、「年間収入の見込み」に基づく概算で差し引いた合計額と、本来納付すべき年間の所得税額とを比較し、過不足金額を調整する手続きを行います。
所得税を払いすぎていた場合は税金が戻ってきて、足りなかった場合は不足分を支払います。
- 「住民税」は年末調整の対象外で、前年の所得にもとづいて自治体が計算し、翌年6月から徴収が始まる別制度です。
確定申告とは?
確定申告とは、自営業やフリーランス、または副業をしている一部の会社員など、年末調整の対象外となる人が行う税金の申告手続きのことです。1年間の「所得」と「必要経費」などをもとに、正確な所得税額を自分で計算し、税務署へ申告・納付します。
確定申告は、通常毎年2月中旬から3月中旬に行われます。この期間内に、前年1月1日〜12月31日までの収入・経費を集計し、税額を確定させます。
所得控除の仕組み
年末調整や確定申告の際、医療費や社会保険料、生命保険料などを支払っている場合には、所得からその分を差し引く「所得控除」という制度を利用できます。
所得税額は、所得の合計額から各種所得控除の合計額を差し引いた金額をもとに計算されるため、所得控除を利用することで、支払う税金を少なくすることができます。これが「所得控除」の仕組みです。
火災保険と地震保険は年末調整・確定申告で所得控除の対象になる?

冒頭で述べたように、火災保険の保険料は年末調整・確定申告で所得控除の対象にはなりません。2006年度の税制改正により、2007年1月1日以降、所得控除の対象から「損害保険料控除」が外れたためです。
なお、経過措置として、下記の要件をすべて満たしている「一定の長期損害保険等に係る損害保険料」(旧長期損害保険料)については、後述する地震保険料控除の対象とすることができます。
- 2006年12月31日までに契約を締結していること(保険期間または共済期間の始期が2007年1月1日以後のものは除く)
- 満期返戻金などがあり、保険期間または共済期間が10年以上の契約であること
- 2007年1月1日以後に対象の損害保険契約等の変更をしていないこと
地震保険が所得控除の対象となる条件
前述のとおり、地震保険の保険料は、年末調整・確定申告で所得控除の対象になります。2006年度の税制改正により損害保険料控除が廃止されましたが、新たに地震保険料控除が設けられました。
地震保険料控除が適用されるのは、地震保険に該当する「保険料」や「掛金」などの地震保険料のみです。経過措置の条件を満たした「長期損害保険等に係る損害保険料」も対象ですが、新旧のどちらにも該当している場合は、いずれか一方を選択できます。
ちなみに、地震保険は「地震保険に関する法律」にもとづいて、政府と民間の損害保険会社(以下「損保会社」)が共同で運営しており、補償内容と保険料はどの損保会社でも同じです。火災保険とセットでの契約が必要となり、地震保険のみの加入はできませんのでご注意ください。
- ソニー損保の新ネット火災保険では、「地震上乗せ特約(全半損時のみ)」を付帯している場合、地震上乗せ特約の保険料も地震保険と同様に地震保険料控除の対象になります。
地震保険料控除の金額
地震保険料控除とは、支払った地震保険部分の保険料に応じて、一定の金額の所得控除を受けられる制度です。地震保険料控除は、所得税および住民税の両方に適用されます。
所得税は、その年に支払った地震保険料の金額が50,000円以下であれば支払った保険料の全額、50,000円を超えていれば一律50,000円が控除されます。住民税は、その年に支払った地震保険料の金額が50,000円以下であれば支払保険料の2分の1、50,000円を超えていれば一律25,000円が控除されます。
旧長期損害保険料を地震保険料控除において申請する場合や、地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合は、控除額の計算方法が異なりますのでご注意ください。
区分 | 年間支払保険料 | 控除額 |
---|---|---|
@地震保険料 | 50,000円以下 | 年間支払保険料の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
A旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 年間支払保険料の全額 |
10,000円超〜20,000円以下 | 年間支払保険料×1/2+5,000円 | |
20,000円超 | 一律15,000円 | |
@Aの両方がある場合 | @+Aの控除額の合計額が 50,000円以下 |
@+Aの合計額 |
@+Aの控除額の合計額が 50,000円超 |
一律50,000円 |
区分 | 年間支払保険料 | 控除額 |
---|---|---|
@地震保険料 | 50,000円以下 | 年間支払保険料×1/2 |
50,000円超 | 一律25,000円 | |
A旧長期損害保険料 | 5,000円以下 | 年間支払保険料の全額 |
5,000円超〜15,000円以下 | 年間支払保険料×1/2+2,500円 | |
15,000円超 | 一律10,000円 | |
@Aの両方がある場合 | @+Aの控除額の合計額が 25,000円以下 |
@+Aの合計額 |
@+Aの控除額の合計額が 25,000円超 |
一律25,000円 |
複数年分の地震保険料を一括で支払った場合は、「一括払地震保険料÷保険期間(年)」の計算式で1年分に換算した額が、毎年の所得控除の対象となる保険料となります。
地震保険料控除の条件や金額についてより詳しくは、下記ページもご覧ください。
地震保険料控除とは?地震保険料控除を受けて税負担を減らすには?
年末調整・確定申告における地震保険料控除の手続方法はそれぞれ異なります。以下では、これからお手続きを進める方に向けて、具体的な手続きの方法を紹介します。
年末調整の場合
年末調整で地震保険料控除を受ける方は、以下に挙げた2つの書類を用意します。
- 1. 地震保険料控除証明書(保険会社発行)
- 2. 給与所得者の保険料控除申告書(会社から配布)
申告書の「地震保険料控除」欄に必要事項(保険会社名、保険等の種類、保険期間、支払保険料など)を記入し、控除証明書に記載された金額を正確に転記してください。税額が変わるため、複数の保険がある方はすべて記入して合計額を計算・記載する書き方となる点に注意します。
用意できた控除証明書・申告書は、会社が指定する期限内に提出します。この際、複数の会社へ従事している方の場合は、主たる勤務先へ提出してください。なお、地震保険料控除証明書は原本を提出するか、電子データで提出できます。
場合によっては、「地震保険」以外にも、生命保険・小規模企業共済等の証明書が必要になるなど、個人によって異なるため、より詳しくは「給与所得者の保険料控除の申告」のページを確認してください。
確定申告の場合
年末調整で控除を受けなかった場合や自営業者などが確定申告の対象となります。地震保険料控除を受けるための必要書類は、以下の2つとなります。
- 1. 地震保険料控除証明書(損保会社発行)
- 2. 確定申告書(印刷・税務署や確定申告会場からの受取り等)
おおまかにまとめると確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」欄、第二表の「地震保険料控除」欄を記載・提出して税金の額面を確定することになります。これらの他、保険会社名、保険等の種類、支払保険料などの記入も必要です。
年末調整と同様に、「地震保険料控除証明書」は紙で提出する場合は原本、e-Taxを使う場合は電子データ(別途郵送も可)で提出できます。なお、マイナポータル連携でお手続きを進める場合は、自動的にデータを連携する仕組みとなっているため、控除証明書を添付する必要はありません。
確定申告を受ける際に必要な書類や詳細な記載例、具体的な書き方については、「国税庁ホームページ」をご覧ください。
地震保険料控除証明書の取得方法
前述のとおり、年末調整・確定申告で所得控除を受けるには、地震保険料控除証明書の提出が必要です。地震保険料控除証明書は損保会社が発行しますが、取得方法は各社で異なるため事前に確認しておきましょう。

ソニー損保の場合、地震保険料控除証明書を以下の方法で取得することが可能です。
- 郵送
- 電子データのダウンロード
郵送での取得
ソニー損保では、対象となるご契約のお客さまに毎年10月中旬に保険料控除証明書を発送します。
ただし、継続手続きをいただいた年の控除証明書は、保険証券・保険契約継続証に同封しています。
電子データでのダウンロード
ソニー損保では、そのほか電子データ(XMLファイル)として保険料控除証明書を取得することができます。ダウンロードは、損保会社が共同で構築した「保険料控除証明書発行サービス」からご利用可能です。
なお、電子データのお手続きに際しては、ID登録・パスワードの手続きが必要となるほか、2022年以前のご契約または対象外のデータは取得できませんので、あらかじめご了承ください。
そのほか、詳細な手続きの方法、再発行のお手続き、またはマイナンバーカードを利用したお手続きなどは下記ページをご覧ください。
保険料控除証明書について地震保険は火災保険とセットで加入して、万一に備えよう
火災保険と地震保険をセットで加入すると、その分保険料はかかりますが、地震による損害に備えられるうえ所得控除も受けられるのでおすすめです。
ソニー損保の新ネット火災保険では、地震保険をはじめ、お客様ひとりひとりのニーズに合わせて補償を自由に組合せることができますので、お気軽にお見積りください。
- 「火災、落雷、破裂・爆発(建物)」の補償は必須になります。
- 本記事は2025年6月時点の内容です。所得控除等に係る内容の詳細は、国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp)よりご確認ください。