火災保険で「落雷」による損害は補償される?
建物や家財への補償例や請求方法を解説
- この記事は、一般的な火災保険商品について説明しております。ソニー損保の新ネット火災保険の詳細はこちらからご確認ください。
落雷とは、雲と地上との間で発生する放電のことです。気象庁の公表資料によれば、落雷害の報告数が多いのは7〜8月で、発生地域としては日本海側より太平洋側でより多くの落雷害が報告されています。落雷は局地的な災害のため広域災害による被災者支援の対象にはなりにくいものの、落雷で火災などが発生すれば、最悪の場合、生活基盤を失うおそれもあります。
落雷によって建物や家財に損害を受けたときは、火災保険で補償されます。自宅への直接の落雷でなくても、送電線への落雷などで室内の電化製品がショートしたり、故障したりする損害も補償されます。以下で詳しく解説します。
落雷による被害は火災保険の補償対象
落雷による建物や家財の損害は、火災保険で補償を受けられます。
落雷とは、雲と地上との間で発生する放電のこと。気象庁の公表資料によれば、落雷害の報告数が多いのは7〜8月で、日本海側より太平洋側でより多くの落雷害が報告されています(2005年〜2017年)。
この12年間で1,540件という落雷害の報告数をみると、さほど頻繁に起こる災害とは言えないかもしれません。それでも運悪く自宅に落雷するなどして火災が起きたり、住宅が損壊したりすれば、最悪の場合、生活基盤を失うおそれもあります。
- 気象庁ホームページ「落雷害の月別件数」を加工して作成
- 報告数は、全国56官署が県単位(北海道及び沖縄県は更に複数の区域に分割)で、低気圧や前線の通過など一連の気象現象における落雷害の発生を1件としてカウントしている。
水災や地震などの自然災害により住宅に被害を受けたときには、国や自治体による公的支援があります。しかし、落雷で被害を受けたとしても、公的支援を受けられないかもしれません。
自然災害時の主な公的支援制度に、住宅全壊世帯等に最大300万円の支援金が給付される「被災者生活再建支援制度」があります。この支援制度が適用されるのは、市区町村に10世帯以上の住宅全壊世帯が生じた場合等と規定されています。しかし落雷は局地的な災害です。木造住宅が密集する地域への落雷によって、広域にわたる延焼被害が起きるといった場合を除き、落雷による住宅被害が広域の多数世帯に及ぶことはさほど多くないと考えられます。
公的支援を受けられず、自ら落雷被害への対策を行わなくてはならないとすれば、ここはやはり火災保険の出番、ということになります。
火災保険で落雷が補償されるケース
火災保険の落雷補償は、「火災、落雷、破裂・爆発」として多くの火災保険の基本補償となっています。そのため落雷補償は、火災保険に自動的に付帯されていることが多いです。
落雷で住宅が被害を受けたときに保険金を請求できる損害として、以下のケースがあげられます。
- 自宅に落雷し、屋根や壁が損壊した
- 自宅に落雷し、火災損害を被った
- 自宅の垣に落雷し、塀や門が破損した
- 自宅の給湯器に落雷し、破損した
- 自宅に落雷し、火災になった
建物だけでなく、物置や給湯器、エアコン等の損害も付属設備としてカバー可能です。
火災保険では補償されませんが、たとえば家族が落雷によりケガを負うなどした場合には、治療にあたり公的医療保険が適用されます。まずは救急車を呼び、救助を急ぎましょう。傷害保険や医療保険に任意で加入している場合には、入院や通院を対象に保険金を受取れる場合がありますので、忘れず請求しましょう。
テレビ等の電子機器の故障も落雷補償の対象
住宅に直接落雷しなかった場合でも、送電線などへの落雷で、自宅の電子機器が以下のような損害を受けた場合も補償されます。
- 落雷でテレビが壊れた
- 落雷でパソコンが壊れた
落雷によるテレビやパソコンといった電子機器の故障も、落雷による被害として火災保険金を請求できます。家電製品の損害も同様に補償対象です。
電子機器は高額なものも多いので、突然の損害で家計に負担がかかることもあるでしょう。このとき損害を保険金でカバーできれば、家計の助けになります。火災保険の基本補償で落雷による被害がカバーできることを覚えておいてください。
ただし、パソコン自体の修理費用は補償対象でも、データ、ソフトウェアまたはプログラム等の無体物は対象外です。
電子機器等の損害の補償を受けるには、家財を対象とした火災保険に加入しておく必要があります。「火災保険には住宅ローン契約時に入った」という人は少なくないですが、住宅ローン契約時に求められるのは建物の火災保険です。家財の火災保険への加入は任意なので、加入していないことがあります。気になった人は、自分の火災保険の契約内容を今一度確認しましょう。家財の補償がなければ、折を見て加入を検討してみましょう。
賃貸住宅でも同様に保険金を請求できる
賃貸住宅に住む人の場合は、賃貸借契約時に家財の火災保険に加入することも多いでしょう。賃貸借契約時に加入する火災保険でも、落雷は補償対象となることが多いので、被害を受ければ保険金を受取れるかもしれません。そのときは損害保険会社(以下「損保会社」)に速やかに連絡して保険金を請求しましょう。火災共済でも、落雷保障が受けられます。
すでに火災保険に加入済みで落雷補償が受けられるか知りたいときは、まず保険証券を確認しましょう。補償欄に「落雷」の記載があれば対象になるはずです。
保険証券の内容が分からなかったときは、保険証券に記載のある損保会社等に連絡をして確認しましょう。保険証券を紛失してしまった場合は、火災保険を契約した不動産業者などに連絡をして、再発行の手続きをしましょう。
落雷に限らず火災保険で補償されないケース
他方で、火災保険では補償されないケースも知っておいてください。落雷に限らず、火災保険で補償されないのは以下のようなケースです。
- 老朽化や経年劣化による損害
- 損害額が免責金額の範囲内
- 保険金請求の時効である事故が発生した時の翌日から3年経過してからの請求
住宅が時間の経過とともに古くなるのは必然です。火災保険は自然災害や一定の偶然な事故をカバーするのが目的であり、必然に起きる損害は補償の対象外となります。契約者等の故意または重大な過失で生じた損害も補償の対象外です。
損保会社により異なりますが、免責金額(自己負担額)は3万円、5万円、10万円などの金額を設定できます。免責金額が高いほど保険料は安くなりますが、事故時には損害額から免責金額を差引いた額が損害保険金となるため、免責金額が高いほど受取れる保険金は少なくなります。損害額が免責金額以下の場合には、保険金の請求はできません。電子機器の落雷損害といったケースだと、免責金額以下の損害額となり、請求できないケースもあるかもしれません。
保険金の請求に時効があることも知っておきましょう。一般に保険金請求は事故が発生した時の翌日から3年を経過すると時効にかかります。時間が経つほど事故と損害の因果関係を証明するのは難しくなるので、速やかな保険金請求を心がけましょう。
保険の対象を何にするかによって落雷被害で補償される内容が異なる
個人を対象にする火災保険には、建物(住宅)を補償するものと、家財を補償するものがあります。落雷による損害を受けたとき、建物の損害は「建物」、家財の損害は「家財」を保険の対象に設定していれば、それぞれの損害に対して補償を受けられます。
「建物」「家財」の対象となる具体例
建物
- 窓
- 屋根
- 畳や床材、内壁など
- 門や塀、車庫、カーポートなど
- 備えつけの冷暖房設備など
- マンション等の区分所有建物の場合、一般的に建物には「共用部分」は含みません。
家財
- 家具
- 家電製品
- 家庭用の食器、日用品
- 自転車、125t以下の原動機付自転車
「建物」とは、土地に定着している建物のことで、屋根や壁、柱などの構造のほか、窓や電気ガス、キッチンや浴槽、さらには門や垣、物置などの付属設備までが含まれます。よってこれらが落雷で損害を受けたときに補償されます。
「家財」は建物に収容されている生活用の持ち物をいい、家電製品や家具、衣類、原動機付き自転車や自転車その他を含みます。よってこれらが落雷で損害を受けた場合、補償を受けられます。
落雷被害に遭った際の損害保険金の目安
火災保険は、建物や家財を再度取得するために必要な金額(「再調達価額」)で契約するのが一般的です。その場合、実際の損害額を保険金として受取れます。
損害額及び支払われる保険金は、以下のような方法で算出します。
建物や家財が全損となった場合
損害額=再取得費(再築費用・再購入費)=損害保険金
全損の場合、建物や家財を再取得するために必要な金額が損害額となり、その額がそのまま受取れる損害保険金となります。
修理可能な場合
損害額=修理費(修理に伴い生じた残存物がある場合はその価額を控除)
損害保険金=損害額ー免責金額(自己負担額)
修理可能な場合、損害を受けた残存物がなければ修理費がそのまま損害保険金となり、そこから免責金額を控除した金額が受取れる損害保険金となります。
落雷被害に遭った際の火災保険金請求の流れ
最後に、一般的な保険金請求フローを確認しておきましょう。
一般的な保険金請求フロー
- 大規模災害等の場合、上記の日数より時間がかかることがあります。
損害を受けたら、可能な限り速やかに損保会社に連絡しましょう。いつ落雷があり、どのような損害が生じたかを具体的に伝えましょう。損保会社によりますが、近年は電話のみならず、ウェブサイトやLINEから専用のチャットルームで連絡ができることがあります。
損害の確認が済んだあとは、修理見積書などの保険金請求書類を郵送など損保会社の指定の方法でアップロードし、その後、保険金支払額が承認されたのち1週間程度で保険金が振込まれます。振込まれたら請求額と保険金の額が合致しているか、念のため最終確認をしておきましょう。
落雷による損害の証明は?
保険金請求の際に必要になるので、損害状況を写真に収めましょう。損害を受けた箇所について、複数の角度、方向、距離から複数枚の写真撮影をします。外観で損害状況がわからない場合、家電メーカー発行の修理不能証明書などの落雷被害を証明する書類の提出を損保会社から求められることもあります。
なお、落雷の観測記録は気象庁ホームページで確認できます。被災日時に落雷があったことを証明する必要があるときは、気象庁の観測記録を印刷したものを証明書としても差支えないとする損保会社もあるようです。わからないときは損保会社に連絡してアドバイスを求めましょう。
いざという時の落雷被害に備え、補償内容や保険の対象の確認を
以上のように、落雷によって生活基盤を失うような損害を被るおそれがあります。落雷で受けた損害は火災保険でカバーできるため、いざというとき慌てずに済むよう、補償内容や保険の対象について改めて確認しておきましょう。
- 掲載内容は掲載当時のものであり、現在と異なる場合があります。